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甦れ!日本の建築2008

【第3回】究極のフロントローディング!48時間で意匠から環境解析までを実行

2008/08/13


48時間で意匠、構造から環境解析までを完了
究極のフロントローディングに日本の建築設計者が挑戦


「ビルディング・インフォメーション・モデリング(BIM)」の大きなメリットは、設計変更がしやすい企画設計の段階で意匠や構造、環境・エネルギーなど、様々な解析や検討を行える「フロントローディング(業務の前倒し)」が可能になることです。

例えば、従来は詳細設計の段階で明らかになった躯体と設備の干渉をあらかじめ発見して解決しておいたり、ビルの形状や配置で、ビルからの太陽光の反射がどのような温度分布を作り出すか、ビル周辺の風速はどうなるかなどを環境シミュレーションによって解析し、後からでは難しいビルの形状や配置の変更を行っておく、といった検討を通じて、よりよい建物を設計、施工することができるようになるのです。

この一連の作業は、建物の企画段階や基本設計段階で行われるのが理想ですが、その“極致”ともいえるインターネット上の設計コンペがあります。「BIMストーム(BIMStrorm)」というもので、世界中からエントリーした設計チームが、開始と同時に与えられた敷地や建物の条件に従って、意匠設計から構造解析、環境解析、完成後のシミュレーションなどを一斉に行い、設計における技術力やコラボレーションなどを競うイベントです。

これまで、米国のロサンゼルスやボストン、オランダのロッテルダムなどを仮想の開発地として開催されてきました。今年6月、ロンドンの再開発地域を舞台に行われたBIMストームに日本の建築設計者がチームを組み、「チーム・BIMジャパン」として初参加したのです。

BIMジャパンの構成メンバー 

 セコム
 IAI日本
 大成建設
 ビム・アーキテクツ
 環境シミュレーション
 大和ハウス工業
 ダイテック
 エーアンドエー



右写真:BIMストーム後に開かれた反省会。参加メンバー以外も集まった


Google Earth上に配置した全体モデル・意匠モデル(以下の画像:IAI日本)
意匠モデルのレンダリング。左が「IFC2SKP」というフリーソフトを使ってIFCデータをSketchUpに読み込ませ、Podiumというソフトでレンダリングしたもの。右が3dsMaxでレンダリングしたもの


「BIMモデルがあれば、打ち合わせは必要なかった」
異なるメーカーのソフトウエア間で建物のデータをリレー


6月24日、BIMストームが始まりました。「OPS」という独特のプロジェクト管理システムを使いながらの設計作業に、初参加のBIMジャパンは戸惑いながらも、BIM班が意匠設計、構造設計、設備設計と作業を進めていきました。

意匠設計を担当したビム・アーキテクツの山際東さんは、「他の設計者との打ち合わせは必要ありませんでした。3次元のBIMモデルデータをサーバーにアップするだけで、設計の意図が伝わり、コミュニケーションがとれました」と振り返ります。つまり図面を使って構造や設備の設計者と打ち合わせする必要はなかったのです。

構造設計も、2〜3時間という短い時間で完了したとのこと。また設備設計と意匠設計の統合には、「IFC形式」というBIMモデルのデータ交換用フォーマットを使いました。

その後、意匠、構造、設備の設計を統合して干渉チェックを行いながら、シミュレーション班が日影計算や風環境、熱環境の解析を同時並行的に行っていきました。

設備設計、構造設計には「Revit」を使い、設備設計には「Tf@s」という3次元の設備設計ソフトを使い、意匠と構造の干渉チェックには「NavisWorks」というソフトを使いました。また、日影解析には「ADS」、風環境には「WindPerfect」、そして熱環境には「サーモレンダー」というソフトを使いました。



BIMストーム開始前に計画していた「BIMシナリオ」
意匠設計後、2〜3時間でできたという構造モデル 意匠設計と構造設計を統合したモデル
設備モデルのIFC出力
熱環境シミュレーションの結果 日影解析の結果



BIMモデルを解析ソフトの入力データとして活用
“BIM2.0時代”の到来をチームBIMジャパンが実証


これらの異なるソフト間でデータ交換を行い、分業と統合を繰り返しながら、一つのプロジェクトを進めていったのです。これだけ短時間のうちに、いろいろな解析を同時並行で行えたのは、意匠設計で作られた建物のBIMモデルデータを、解析ソフトの“入力データ”として使用することができたからです。

従来は、解析ソフト用にそれぞれ、3次元形状をもった入力データを作ることが一般的でしたが、BIMモデルデータをやりとりすることで、再入力の手間がなくなり、極めて短時間で解析することができるようになったのです。

現在、日本のBIMは、建築確認申請用の図面作成などにおいて、平面図、立面図、断面図と建具表などの間での整合性を確保することを、目先のメリットと位置付けて普及が進みつつあります。いわゆる、従来の成果品を作る手段を2次元CADなどから3次元のBIMソフトにチェンジする“BIM1.0”の世界が実現しつつあるわけです。

BIMストームで得られた成果は、建物のBIMモデルデータを意匠設計だけでなく、構造や設備の設計にも生かし、さらに「解析」という従来のCADデータの枠を超えて、広範囲な建築設計実務に生かすことができたことでしょう。設計図書の作成を超えてBIMモデルデータを活用する“BIM2.0”の世界に、日本の建築設計者も足を踏み入れたのです。

48時間の短い時間にもかかわらず、環境解析含めた一通りの検討を複数の設計者や技術者が連携して、“究極のフロントローディング”を実現したBIMジャパンは、“BIM2.0時代”の到来を予言するかのように、BIMによるデータ連携の威力を実例として示しました。

同チームを引っぱったIAI日本技術検討分科会の足達嘉信リーダーは、「今回のBIMストームでは、初参加にもかかわらず審査員賞を受賞することができました。運営の仕組みもよくわかったので、次回は落雷シミュレーションなども行いたい」と、抱負を語りました。日本独自のBIMを、世界に示す日もそう遠くはなさそうです。


完成後のリスク評価のため、監視カメラの設置位置などを検討するシミュレーションも行われた



(「甦れ!日本の建築2008」は原則、毎週水曜日に更新します)

家入 龍太

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