国土交通省は11月1日、首都圏空港のさらなる機能強化を視野に、外部の有識者と関係部署の部課長級を集めた「首都圏空港機能強化技術検討小委員会」を開催した。同省は9月26日に交通政策審議会航空分科会基本政策部会の場で、「今後の首都圏空港のあり方について」というテーマを提示。同小委員会は基本政策部会の下部機関という位置付けで、技術的な面に絞って可能性や選択肢を洗い出す。今年度中に一定の報告をまとめる予定だ。

 同省は2014年度中を目標に羽田空港と成田空港の年間合計発着容量で75万回達成を目指し、例えば羽田では滑走路の改良や延伸、駐機場の新設といった整備に取り組んでいる。同基本政策部会や小委員会では、この75万回達成後が検討課題となる。

 同小委員会の委員長は、家田仁・東京大学大学院工学系研究科教授。そのほか外部有識者としては航空交通問題の研究者、元管制官、元パイロットなど8人の専門家が参加。小委員会開催の冒頭で、同省の田村明比古航空局長は、「国内航空需要のほぼ3分の2を占める首都圏空港の機能でいろいろな選択肢を増やしていくうえで、将来を考えるとインフラを含めて十分ではないのではないかという問題意識を持っている」と述べた。

 「2020年に五輪が開かれるが、一過性のイベントのためだけに議論するわけではない。従来ならいろいろな関係から議論のテーブルに載せることがはばかられるような選択肢もあるが、この小委員会では利害関係を切り離して、まずは純粋に技術的な面から選択肢を洗い出してほしい」(田村局長)。

第1回 「首都圏空港機能強化技術検討小委員会」の冒頭で挨拶する家田委員長(写真:日経コンストラクション)
第1回 「首都圏空港機能強化技術検討小委員会」の冒頭で挨拶する家田委員長(写真:日経コンストラクション)

 同小委員会の終了後、家田委員長は次のように述べた。「初回は、成田と羽田の現状や何が制約になっているかという点を中心に、共通認識を持つために話し合った。今後、重要と思われるものは、一切のタブーなしで検討していく」。既存の管制方式の見直しといったソフト面からのアプローチのほか、横田基地や調布飛行場などの利用可能性、羽田空港の滑走路増設といった選択肢の検討可能性についても、「議題の候補の一つにはなり得る」とする見解を示した。

 「今後のスケジュールはまだ確定していないが、今年度中に一定のメニューを提示することを目標に、毎月1回程度の頻度で小委員会を開催していきたい」(家田委員長)。同省は来年度以降、小委員会での議論の結果をベースに航空会社なども交えて、洗い出された選択肢の実現可能性を探るさらなる検討に乗り出す見通しだ。