ようやくつかんだ64万円の初受注

 心機一転、道路管理者やコンサルタントへの営業に一層の力を入れ、維持管理の高度化をテーマにセントラル・フロリダ大学との共同研究も開始した。活動の幅を広げるうちに初受注の瞬間は唐突にやって来る。

 12年8月、展示会で知り合った米国の建設コンサルタント会社、リソースインターナショナルから、インディアナ州に架かる橋梁の下部構造の点検を手伝わないかと打診があったのだ。2週間後に現場に来てほしいという突貫工程だった。

 調査してみると、橋脚の損傷が凍結融解による劣化であることはすぐに分かった。しかし、それまでの経験上、相手から技術者として認めてもらえるだけの付加価値を示さなければ、次の仕事にはつながらない。

 損傷箇所ごとに進行度を明らかにし、補修の方針を丁寧に提案した。その結果、リソースインターナショナルはネクスコ・ウエストUSAの技術力を認めてくれた。わずか8000ドル(約64万円)の仕事だったが、三つの州政府にプロポーザルを共同提出する関係を構築できた。

■ 初めて受注したインディアナ州の橋梁点検
■ 初めて受注したインディアナ州の橋梁点検 点検対象の橋梁はインディアナ州ラファイエット市が管理する。供用開始は1914年。ネクスコ・ウエストUSAは現地の建設コンサルタント会社から委託を受け、橋脚部分を点検した(写真:ネクスコ・ウエストUSA)
点検対象の橋梁はインディアナ州ラファイエット市が管理する。供用開始は1914年。ネクスコ・ウエストUSAは現地の建設コンサルタント会社から委託を受け、橋脚部分を点検した(写真:ネクスコ・ウエストUSA)

初めて点検を受注したインディアナ州の橋梁を眺める三谷浩二社長(写真:ネクスコ・ウエストUSA)
初めて点検を受注したインディアナ州の橋梁を眺める三谷浩二社長(写真:ネクスコ・ウエストUSA)

 ディズニー・ワールドからの誘いも、こうした地道な活動で知名度を高めた成果だ。最近は、日本企業から米国市場の調査を受注するなど、経営を支えるために始めたサイドビジネスも育ってきた。13年度は点検で約3000万円、サイドビジネスで2000万円超の売上高を見込む。15年度には点検だけで1億円を目指す。