不興を買って180度方針転換

■ 受注に向けて駆けずり回る日々が続く
■ 受注に向けて駆けずり回る日々が続く (1)2009年の試験施工の様子。これを契機に米国でプロモーション活動を続け、11年1月に現地法人の設立に至った。 (2)米国在住スタッフとの訓練の様子。営業活動や点検の場面では、自ら機材の使い方を熟知していなければ話にならない。 (3)全米非破壊検査協会の会議の場での営業活動の様子。 (4)米国では点検作業員が床版上で鎖をけん引し、音で異常部を検出するチェーン・ドラッグ法などを採用している。交通規制を伴うのがネックだ。 (5)時速80km程度で走行しながら、床版上面の浮きの範囲や将来の損傷箇所を予測できる路面点検システム。 (6)(7)2012年にメリーランド州の海上橋で試験的に実施した点検の様子(写真:ネクスコ・ウエストUSA)
(1)2009年の試験施工の様子。これを契機に米国でプロモーション活動を続け、11年1月に現地法人の設立に至った
(2)米国在住スタッフとの訓練の様子。営業活動や点検の場面では、自ら機材の使い方を熟知していなければ話にならない
(3)全米非破壊検査協会の会議の場での営業活動の様子
(4)米国では点検作業員が床版上で鎖をけん引し、音で異常部を検出するチェーン・ドラッグ法などを採用している。交通規制を伴うのがネックだ
(5)時速80km程度で走行しながら、床版上面の浮きの範囲や将来の損傷箇所を予測できる路面点検システム
(6)(7)2012年にメリーランド州の海上橋で試験的に実施した点検の様子
(写真:ネクスコ・ウエストUSA)

 「相手方にすれば、『契約してくれたら機材を買う』という企業に発注するわけがない」(松本副社長)。三谷社長も「今から思えばかなり甘かった」と認める。

 ただ、機材の購入は簡単に決断できることではなかった。同社が用いる高性能赤外線カメラの価格は1000万円を超える。高価な機材を購入したのに受注できない状態が続けば、西日本高速からの出資金1億500万円を早々に食いつぶし、会社が存続できなくなる。しかし、「守り重視」の方針を捨てる判断に至る出来事が間もなく起こる。

 11年秋に、ペンシルバニア州のある橋梁の現場で、同州の道路管理者や建設コンサルタントなどの技術者計30人を招いてプレゼンテーションを行った時のことだ。ほとんど口頭で進めたプレゼンが不興を買い、技術紹介は大失敗に終わった。

 こんなことを繰り返していると、本当に会社が潰れてしまう──。挫折を機に、二人は腹をくくった。すぐさま機材を買いそろえ、半年以上にわたって使い方を反復練習した。

 三谷社長は国内で点検技術の開発や営業に携わった経験を持ち、松本副社長は点検業務を発注・監督する立場だった。

 二人とも、自分たちの技術をよく知っているつもりでいたが、ソフトウエアの動かし方から配線のつなぎ方まで、何もかも把握していなければ異国で技術を売ることなどできないと、身に染みて分かった。三谷社長は「あの失敗は本当の意味で米国の地に足を着けるきっかけになった」と述懐する。