甘すぎた受注戦略で門前払い

 西日本高速が米国進出を決めたのは、2009年にフロリダ州のセブンマイル橋(延長11kmの海上橋)で試験的にひび割れ点検を実施し、高評価を得たのがきっかけだ。

 調べてみると、米国の点検市場は日本よりずっと大きく、優れた技術さえあれば、参入の余地がありそうだった。橋長2m以上の道路橋が約70万橋ある日本では、点検頻度は5年に1回。対する米国では、約60万橋ある橋長6m以上の道路橋を2年に1回の頻度で点検する。しかも、米国では非破壊検査を使った維持管理の高度化への関心が高まっていた。

 こうして11年1月に社員二人のネクスコ・ウエストUSAを設立した。ところが、想像以上に苦戦が続く。なにしろ、日本では誰もが知っている“NEXCO”の看板が米国では全く通用しない。それ以上に問題だったのが当初の経営方針だ。

 設立直後の思惑では、州政府などに営業をかけて、受注が決まった時点で機材を調達し、必要な人材を日本から連れてくる算段だった。そんな具合だから、営業に赴いても「実際の橋梁で技術力を見せてほしい」と言われるだけで、相手にされない。