売りは国内で培った二つの技術

 ディズニー・ワールドも関心を寄せるネクスコ・ウエストUSAの点検技術は、以下の二つから成る。

 一つ目は、高性能カメラで構造物の表面を撮影して解析処理を施し、ひび割れを検出する技術だ。ひび割れの幅や長さなどを数値化して整理できる。二つ目は、赤外線カメラで構造物の表面温度を測定し、健全部と異状部で生じる温度履歴の違いをもとに、浮きや剥離の生じた箇所を特定する技術。損傷箇所の危険度も即座に判定できる。

■ ネクスコ・ウエストUSAが米国で売り込む技術の概要
■ ネクスコ・ウエストUSAが米国で売り込む技術の概要(写真:ネクスコ・ウエストUSA)
(写真・資料:ネクスコ・ウエストUSA)

 前者は目視点検を、後者は打音検査を補完する目的で西日本高速グループが開発した。競合企業に対する強みは、超高性能の赤外線カメラと独自開発の熱画像解析ソフトウエア。このソフトウエアでは、西日本高速が道路管理者として蓄積してきたデータベースと点検結果を照合し、精度の高い損傷度判定が可能だ。

 二つの技術を適用すれば、検査路がない海上橋の下面なども、船上から点検できる。手間の掛かる現場作業を効率化し、分析や補修計画立案に力を割けるのだ。さらに、米国では床版上面からの点検ニーズが高いことを踏まえて、これらを組み合わせた路面点検システムも開発した。路面撮影用カメラと赤外線カメラを車に取り付け、高速走行しながら床版の損傷状況や内部欠陥、将来の損傷箇所を特定する。

 ディズニー・ワールドからの受注をつかみつつあるネクスコ・ウエストUSAの経営は順風満帆に見える。だが、今に至るまでの道のりは決してたやすいものではなかった。

走行しながら床版を点検するために開発したシステムを車両に取り付ける様子(写真:ネクスコ・ウエストUSA)
走行しながら床版を点検するために開発したシステムを車両に取り付ける様子(写真:ネクスコ・ウエストUSA)

路面点検システムを搭載して走行する車両(写真:ネクスコ・ウエストUSA)
路面点検システムを搭載して走行する車両(写真:ネクスコ・ウエストUSA)