発注者の姿勢など三つの課題

 調査では、維持管理にICTを活用できるようにするために必要な項目も尋ねた。この質問の回答からは、今後のICT活用に向けた三つの課題が浮かび上がってきた。

(資料:日経コンストラクション)
(資料:日経コンストラクション)

 一つ目は国や自治体といった発注者の取り組みの強化だ。アンケート調査では、「国や自治体など発注者の予算措置」と「国や自治体など発注者の基準整備」の必要性を訴える意見が、いずれも約6割あった。自由意見でも自治体の取り組みを支援するための予算措置や技術基準の整備を求める声が寄せられていた。

 二つ目はICTのノウハウの取り込みだ。「建設技術者のICT知識の収集・習得」や「ICT技術者(産業)と建設技術者(産業)との協働」という選択肢を選ぶ土木技術者は5~6割に及ぶ。「管理者側にICTの知識が足りない」、「ICTで得られた情報をチェックする人材やネットワークが必要」という意見も出ていた。

 もう一つは、過半の回答者が指摘した測定データと劣化状態をひも付ける知見の獲得だ。測定結果を劣化の程度と照合させる技術については、一定の知見が得られているものの、未解明な部分も多い。計測・点検データを生かした維持管理の領域を広げていくには、この分野の研究を深化させることが不可欠だ。

 ICT活用に向け、計測機器や計測技術に対して、コスト以外の課題を指摘する土木技術者は比較的少ない。計測機器や計測技術については、コストダウンと既存の製品や技術の上手な使い方に知恵を絞ることに、ICT活用のカギがありそうだ。