大阪湾に面したコンビナートで、大阪ガスは世界最大の地上式PC(プレストレスト・コンクリート)LNG(液化天然ガス)タンクを建設している。タンク本体を囲う外径90.8m、高さ43.6mの防液堤を、標準的な施工方法だと9カ月かかるところ、わずか20日間で構築した。工期を9割も短縮したのだ。
一周の285mの壁を筒状に構築
タンクを建設している場所は、大阪府堺市にある大阪ガス泉北製造所第一工場の一角。その容量は23万m3で、PCLNGタンクとしては世界最大の規模を誇る。工事は2012年9月に着手し、基礎杭から防液堤、タンク本体の順に進められている。2015年度中に完成する予定だ。
防液堤とは、万一、タンクからLNGが漏出した際、外部へ流れ出ないようにする壁を指す。防液堤は外径90.8m、壁厚0.8m、高さ43.6mの円筒状の壁で、タンク本体を完全に囲う。通常、荷重は作用しないが、LNGの漏出によって、防液堤の内側から液圧が作用することを想定した設計だ。コンクリートの壁が液圧に耐えられるように、PC鋼材で防液堤の円周方向と鉛直方向にそれぞれ緊張する。
工事を発注した大阪ガスは、防液堤の構築に初めて、「スリップフォーム工法」を採用した。この工法は、煙突や石炭サイロ、橋脚など鉛直方向に伸びる塔状のコンクリート構造物の施工方法だ。鉄筋の組み立てとコンクリートの打設を繰り返しながら、型枠や足場を一体化したスリップフォーム装置を連続的に上昇させる。