日本発の技術を生かした主塔の建設

 主塔の建設を担った三井住友建設は、ベトナムで工事を手掛ける際に資機材を自ら調達・管理している。設備の性能が、品質や安全に直結すると考えるからだ。下請け任せにしないのは、ニャッタン橋の現場も同じ。例えば吊り上げ能力550t・mのタワークレーンはスペインから、基礎に使用した鋼管矢板の施工機械はシンガポールから自前で調達した。

ニャッタン橋で使用するコンクリートは、陸上のプラント2基と台船上の1基で製造した。供給能力は1時間当たり120m3。経験豊富なフィリピン人技術者を中心に練り上げた。ベトナムでは打設前の温度が32℃以下、空気量が3%以下といった厳しい基準を課す。亜熱帯気候に属するハノイ市の夏は猛暑。温度管理に気を配り、打設も深夜に限定した(写真:三井住友建設)
ニャッタン橋で使用するコンクリートは、陸上のプラント2基と台船上の1基で製造した。供給能力は1時間当たり120m3。経験豊富なフィリピン人技術者を中心に練り上げた。ベトナムでは打設前の温度が32℃以下、空気量が3%以下といった厳しい基準を課す。亜熱帯気候に属するハノイ市の夏は猛暑。温度管理に気を配り、打設も深夜に限定した(写真:三井住友建設)

 A字形をした主塔は鉛直線に対して下方が22度、上方が14度も傾いている。複雑な形状の主塔を施工するために油圧ジャッキでせり上がるセルフクライミング式の作業床と鋼製システム型枠を採用。鉄筋は地上のプレハブヤードでかご状に組み、据え付けた。

 主塔を支える基礎には、日本発の技術である鋼管矢板基礎工法を大々的に採用した。直径1.2m、長さ約45mの鋼管矢板を用いて長さ48.7m、幅16.9mの小判形に仕切った空間をつくり、内部には厚さ5.5mのコンクリートを打設してA字形の主塔を支える。

 鋼管は、高圧水を噴射するウオータージェット工法で掘削しながら、バイブロハンマーで建て込んだ。鋼管矢板を使用するのはベトナム初の試みで、ニャッタン橋での採用を契機にベトナムの設計基準に盛り込まれた。

主塔を効率良く建設するために採用したセルフクライミング式の足場。主塔の鉄筋は直径51mmと太く、施工が難しい(写真:三井住友建設)
主塔を効率良く建設するために採用したセルフクライミング式の足場。主塔の鉄筋は直径51mmと太く、施工が難しい(写真:三井住友建設)

閉合したばかりの主塔上部。2012年10月に撮影(写真:日経コンストラクション)
閉合したばかりの主塔上部。2012年10月に撮影(写真:日経コンストラクション)
閉合した主塔の上部。2012年10月に撮影(写真:三井住友建設)
閉合した主塔の上部。2012年10月に撮影(写真:三井住友建設)

先行して完成した主塔で、鋼桁架設を始めた様子。写真は2012年11月の状況(写真:IHIインフラシステム)
先行して完成した主塔で、鋼桁架設を始めた様子。写真は2012年11月の状況(写真:IHIインフラシステム)