日本発の技術を生かした主塔の建設
主塔の建設を担った三井住友建設は、ベトナムで工事を手掛ける際に資機材を自ら調達・管理している。設備の性能が、品質や安全に直結すると考えるからだ。下請け任せにしないのは、ニャッタン橋の現場も同じ。例えば吊り上げ能力550t・mのタワークレーンはスペインから、基礎に使用した鋼管矢板の施工機械はシンガポールから自前で調達した。
A字形をした主塔は鉛直線に対して下方が22度、上方が14度も傾いている。複雑な形状の主塔を施工するために油圧ジャッキでせり上がるセルフクライミング式の作業床と鋼製システム型枠を採用。鉄筋は地上のプレハブヤードでかご状に組み、据え付けた。
主塔を支える基礎には、日本発の技術である鋼管矢板基礎工法を大々的に採用した。直径1.2m、長さ約45mの鋼管矢板を用いて長さ48.7m、幅16.9mの小判形に仕切った空間をつくり、内部には厚さ5.5mのコンクリートを打設してA字形の主塔を支える。
鋼管は、高圧水を噴射するウオータージェット工法で掘削しながら、バイブロハンマーで建て込んだ。鋼管矢板を使用するのはベトナム初の試みで、ニャッタン橋での採用を契機にベトナムの設計基準に盛り込まれた。