コスト面ではまだまだ

 点検の効率化や確実性の確保、補修計画などの合理化、事故の防止、大規模災害時の安全確保――。東京ゲートブリッジに導入したようなシステムは、社会インフラの維持管理を進化させる可能性を秘める。しかし、普及にはいくつもの障壁がある。その一つがコストだ。

 東京ゲートブリッジの場合、モニタリングシステムの導入費は約1億6000万円だった。「総事業費約1125億円の0.1%程度で導入できる」との楽観的な見方もあるが、国が整備した新設の橋だからこそ実現できた面が大きい。

 07年の国交省の試算では、道路橋1橋に1年間に掛けられる維持・修繕費は、都道府県と政令市の71万円に対し、市区町村では8万円。既設の橋の老朽化という切実な悩みを持つ自治体ほど財政が逼迫し、導入が難しいのだ。まずは、重要度の高い既設の構造物であれば導入できるように、コストを下げる必要がある。

 ただし、土木技術者が「お客様」として実用化を待つだけでは、このような課題は克服できない。インフラの管理者が、民間企業や研究機関に技術開発や実証試験のフィールドを積極的に提供するなど、ビジネスモデルを描く手助けをしていくことが第一歩となる。

 日経コンストラクション8月26日号特集「到来! スマートメンテナンス」では、モニタリングシステムや既存の点検データの活用、あるいはカーナビなどの利用者情報を活用した社会インフラの維持管理について、最新の事例を紹介しつつ、本格的な普及に向けた課題を探った。併せてお読みいただきたい。

東京ゲートブリッジの歩道から中央防波堤方面を望む(写真:日経コンストラクション)
東京ゲートブリッジの歩道から中央防波堤方面を望む(写真:日経コンストラクション)