「笹子」を契機に東京ゲートブリッジに再注目

 きっかけは、12年末の中央自動車道笹子トンネル天井板崩落事故。インフラの老朽化と、人の経験に頼った点検の実態に関心が集まり、維持管理にセンサーやICT(情報通信技術)を活用する機運が高まった。

 東京ゲートブリッジのモニタリングシステムは、数少ない事例の一つとして脚光を浴びた。そのシステムは、暴風雨時などの規制に用いる「交通管理情報の取得」と、橋梁の状態を把握する「構造物のモニタリング」に大別できる。

東京ゲートブリッジに設置した主なセンサーの位置(資料:国土交通省などの資料をもとに日経コンストラクションが作成)
東京ゲートブリッジに設置した主なセンサーの位置(資料:国土交通省などの資料をもとに日経コンストラクションが作成)

東京ゲートブリッジにおけるモニタリングシステムの考え方(資料:国土交通省などの資料をもとに日経コンストラクションが作成)
東京ゲートブリッジにおけるモニタリングシステムの考え方(資料:国土交通省などの資料をもとに日経コンストラクションが作成)

 インフラの維持管理面で注目を集める後者は、三つの項目から成る。まずは「常時の健全度把握」。温度変化に伴う橋の伸縮から、支承などに異状がないかを監視する。防じんゴムカバーに覆われた支承は目視点検が困難なので、変位計で挙動を把握し、桁内温度との相関を見る。

 次に「地震時の健全度把握」。構造物の損傷状況を判断し、地震後の早期開放に役立てる。損傷を見極めるための加速度計は、FEM動的解析による「損傷シナリオ」に基づいて配置した。例えばレベル2地震動の場合、最初に伸縮装置、次に鉛直支承のサイドブロックが衝突して損傷する。こうした重要部材の近傍に加速度計を設け、強い衝撃を検知した場合に損傷したとみなす。

 最後に「予防保全型管理に向けた情報の取得」。通行車両の重量(20t以上の車両の台数)を、鋼床版のUリブに貼り付けたひずみ計の値から推定し、疲労損傷が発生しやすい部位などの当たりを付ける。TTESの菅沼久忠社長は「どこが損傷しやすいかが分かれば、重労働である桁内点検の効率化に役立つ」と説明する。

伸縮装置の下に設置したセンサー。橋が伸縮すると、桁間に張られたワイヤが左手の金属製の箱の中に巻き取られ、光ファイバーのひずみに変換される。これをもとに変位を計測できる。橋脚に設けた変位計も同じ仕組みだ(写真:日経コンストラクション)
伸縮装置の下に設置したセンサー。橋が伸縮すると、桁間に張られたワイヤが左手の金属製の箱の中に巻き取られ、光ファイバーのひずみに変換される。これをもとに変位を計測できる。橋脚に設けた変位計も同じ仕組みだ(写真:日経コンストラクション)