海図・実測で航路を独自「開拓」
第三管区海上保安本部交通部安全課の柏木秀美専門官によると、浦賀水道航路の平均水深は40m弱だが、30mを下回る箇所もある。もしサブステーションが単独で航行しているなら浅い箇所を避けて通ることも容易だが、実際には引き船4隻をはじめとする9隻が、サブステーションを中心に全長300m、幅100mにわたって船団を組む。「進路が横方向にぶれて、サブステーションの底が海底に当たる恐れもある」と柏木専門官は判断した。しかもえい航の速度は4ノット(時速4カイリ=約7.4km)で、「11~12ノットで同航路を航行するほかの船舶の邪魔になる」(柏木専門官)。一日に通る船舶が500隻前後に上り、交通量の多さが日本有数の同航路で海難事故が起これば、影響は計り知れない。
そこで東亜建設工業は浦賀水道の海図を調べて、正規の航路の近くに水深37m以上の独自の航路を長さ22km、幅約340~400mにわたって確保するめどをつけた。正規の航路の外で海図の精度が低いため、第三管区海上保安本部の指示を受けて13年1月末に実測で水深を確認し、万全を期した。東亜建設工業横浜支店の館明・技術部長は、「測量船の確保に苦労した。震災復興で東北地方へ行っている船が多かったからだ」と振り返る。
野島崎沖を経て外洋へ出てしまえば、水深に関する心配は不要となる。こうして航路は確保できたが、まだ難題は残っていた。えい航の時期をいつに設定するかだ。