福島洋上風力コンソーシアム(丸紅など企業10社と東京大学で構成)が6月28日から7月1日にかけて、浮体式の風力発電設備を千葉港(千葉県市原市)から小名浜港(福島県いわき市)までえい航した作業は広く注目を集め、様々なメディアで報じられた。だが、福島沖に洋上風力発電所を開設するための設備のえい航作業は、これで終わりではなかった。

 同じく浮体式の洋上サブステーションを7月中旬に横浜港の南本牧ふ頭(横浜市)沖から福島沖へえい航する作業が残っていた。洋上サブステーションは変電所や観測タワーなどの機能を担う重要な設備で、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)が製作した。同社は2012年11月、サブステーションのえい航作業を東亜建設工業に発注した。

東亜建設工業が起重機船を使って、洋上サブステーションをJMU横浜事業所磯子工場(横浜市)のドックから横浜港の南本牧ふ頭沖に吊りだしているところ。7月11日撮影(写真:福島洋上風力コンソーシアム)
東亜建設工業が起重機船を使って、洋上サブステーションをJMU横浜事業所磯子工場(横浜市)のドックから横浜港の南本牧ふ頭沖に吊りだしているところ。7月11日撮影(写真:福島洋上風力コンソーシアム)

 洋上サブステーションは高さ111mで塔のような形をしている。問題はえい航中の喫水(船体の一番下から水面までの高さ)が32mもあることだ。一般的な航路や港湾は、喫水が30mを超えるような構造物が通ることを想定していない。船舶の喫水はそれほど深くないからだ。例えば、JMUが8月6日に進水式を挙行した海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」の喫水は7.1mしかない。浮体式の風力発電設備の高さは122mでサブステーションを上回るが、えい航時の喫水は通常の船舶と同程度の10mだった。