写真家・篠山紀信氏による写真集「現場紀信」(2012年12月25日発行、日経BP社刊)では、篠山氏が撮影した延べ15の現場の写真を収録した。連載第5回では、横浜港・南本牧ふ頭のコンテナターミナル建設現場を取り上げる。

寒風吹きすさぶなか、撮影は6時間近くに及んだ。直径24.5m、高さ32mと特大の鋼材を、ハイテクを駆使して海中に据え付ける工事だが、最後の最後は人間が行う細かい作業が成否を決める。篠山氏は、その「人の技」にフォーカスした。


写真集「現場紀信」―横浜港南本牧ふ頭―より(写真:篠山紀信)
写真集「現場紀信」―横浜港南本牧ふ頭―より(写真:篠山紀信)

 とにかく寒い。冷たい海風がさらに強く吹く。

 超大きな鋼板を吊り上げて、所定の位置に据え付けるという単純な作業なのだが、これがそう簡単にはいかない。

 まず海上の起重機船の操作によって、大きな凧(たこ)のような鋼板を移動するのだが、風の影響を受けやすい。風速10m以上で工事は中止と聞いていたが、現場に到着した時点で既に超えている。

 「風は弱まり回復に向かう」という天気予報を信じて、現場で待ち続けるのだがいっこうに工事は敢行されない。

 待つこと2時間、結局工事は敢行されることになったが、中断と再開を何度も繰り返し、6時間近く現場で撮影を続けることになった。

 現場に長く居続けたかいもあり、曇天から日が差すまで、様々に空模様が変化し、さらに風の影響でドラマチックな雲を撮ることができた。

 起重機船の操舵室から指令を出し鋼板を空中移動するのだが、その動きはダイナミックだ。とても現代の最新テクノロジーがなくてはこんなものは運べない。


写真集「現場紀信」―横浜港南本牧ふ頭―より(写真:篠山紀信)
写真集「現場紀信」―横浜港南本牧ふ頭―より(写真:篠山紀信)