規模だけでなく内容の議論を

 公共事業をめぐる一連の議論で残念なのは、100兆円を超える投資規模ばかりが注目を集め、肝心の内容について、ほとんど議論が深まっていない点だ。

 防災関連のインフラ投資に関して、国民が一定の理解を示しているのは確か。日経コンストラクションが今年1月31日から2月6日にかけて一般市民418人に実施した意識調査では、「防災関連の公共事業には従来以上にお金をかけるべきだと思うか」との質問に対して、合計59%が「非常にそう思う」または「ややそう思う」と答えた。

 しかし、公共事業そのものに対する視線は依然として厳しい。「無駄な公共事業が多いか」との問いに「非常にそう思う」または「ややそう思う」と回答した人は合計74%にも上っている。

日経コンストラクションが1月31日から2月6日にかけて一般市民418人に実施した意識調査の結果(資料:日経コンストラクション)
日経コンストラクションが1月31日から2月6日にかけて一般市民418人に実施した意識調査の結果(資料:日経コンストラクション)

 景気対策を目的とする公共事業では質よりも規模が重視され、無駄を生みやすいとの指摘は以前からなされてきた。国民の理解を得たいのであれば、各党は法案や提言の内容をより丁寧に説明する必要がある。09年の政権交代で民主党が掲げた「コンクリートから人へ」というスローガンに、反発を覚えた土木技術者は少なくない。しかし、その看板を「人からコンクリートへ」に掛け替えるようでは、国民の信頼をさらに失いかねない。

 日経コンストラクションでは、国土強靱化基本法案を提出した意図について、自民党の脇参院議員にインタビューを実施。詳細を8月27日号に掲載する予定だ。併せてご覧いただきたい。