「先祖返り」との批判も

 公明党が7月10日に骨子を示した「防災・減災ニューディール推進基本法案」や、民主党を中心とした超党派の議員で構成する「新たな戦略的国土地域政策を推進する議員連盟」が7月5日に示した「日本再生計画~ビジョン2030~」も、ほぼ同様の考えの下、財政出動による大型公共投資の必要性を主張する。

 一方で、こうした動きをけん制する声が高まり、議論は過熱してきた。民主党の前原誠司政調会長は、自民党が掲げる国土強靱化を「先祖返り」と指摘。公共事業のバラマキにつながるとして批判を強める。

国土強靱化基本法案を批判した民主党の前原誠司政調会長。写真は同氏が国土交通大臣を務めていた2010年4月に撮影したもの(写真:日経アーキテクチュア)
国土強靱化基本法案を批判した民主党の前原誠司政調会長。写真は同氏が国土交通大臣を務めていた2010年4月に撮影したもの(写真:日経アーキテクチュア)

 公共政策を専門とする慶応義塾大学経済学部の土居丈朗教授は「防災や減災という国民が批判しにくい名目を付けているが、やろうとしていることは公共事業の政治的誘導といえる」と断じる。

 土居教授は続ける。「費用対効果の高い防災・減災を目指すなら首都直下地震対策に集中しなければならないはずだが、自民党や公明党が想定しているのは全国的な公共事業の展開だ。また、真に防災を名目とした公共事業を行うなら、景気対策から独立して行うべきだ。二兎を追うと、防災が相対的に軽んじられる」。