国土交通省の「インフラ海外展開推進のための有識者懇談会」(座長:家田仁・東京大学大学院教授)は6月22日、日本企業の海外におけるインフラビジネス展開の戦略や具体的施策を取りまとめた。

 政府が2010年6月にインフラ事業者の海外展開などを盛り込んだ新成長戦略を閣議決定してから2年が経過。アジアでは、20年までに約8兆ドルという膨大なインフラ整備の需要が見込まれることもあって、これまでのインフラ輸出の取り組みを総括して、今後の新たな戦略を練り直す必要があった。

 取りまとめでは、納期を守り、安全を重視し、見えない部分で工夫し、品質向上へ不断の努力をするといった、「信用と信頼」が日本の強みだと指摘。それに加えて、もとからある技術力を生かし、地元ニーズに的確に応えていくことが重要だとした。また、懇談会は、今後進めるべき15項目から成る具体的施策を示した。

■15項目の具体的施策
(1)相手国のニーズを踏まえた案件の発掘・形成の強化
(2)国内外におけるモデルプロジェクトの促進
(3)勝てるチームづくりのための人材育成
(4)現地における技術者・技能者層の育成
(5)情報収集の強化と人的ネットワークの構築、活用
(6)公的部門のノウハウなどの活用
(7)ジャパン・イニシアチブ
(8)ODA(政府開発援助)との連携によるPPP(官民連携)プロジェクトの促進
(9)面的プロジェクトの推進
(10)政府間対話の積極的な活用
(11)公的制度の不断の改善
(12)防災パッケージの展開
(13)ソフトインフラの海外展開
(14)海洋インフラなどの海外展開
(15)国内市場の国際化

 例えば、施策の一つである国内外のモデルプロジェクトの促進では、スカイツリーを具体例に挙げて、日本の技術力の高さを相手国に認識してもらう広報活動などを支援する必要があるとした。

 ジャパン・イニシアチブの項目では、インフラの管理・運営などの「川下」部分で、産業革新機構を活用して地元会社の買収なども選択肢としてあり得ると指摘。特に、日本と良好な関係にあるブラジルやシンガポール、マレーシアなどとの協働が、海外展開を図るうえで重要だとした。

 また、PPP(官民連携)プロジェクトの促進では参考事例として、インフラ部分をODA(政府開発援助)で整備し、上屋部分はPPPで実施するベトナムのラックフェン港で採用した手法を挙げた。

 次のページでは、事業分野ごとに、当面、実施すべき事業の方向性を示す。