「くしの歯作戦」命名の経緯

――ところで、「くしの歯作戦」というネーミングはユニークですね。一般の人への情報発信も考えての命名だったのでしょうか。

 ネーミングについて「以前から考えていたのか」などと聞かれますが、とっさに思いついたというのが実情です。ただ、できるだけ現場に分かりやすい言葉を選んだことが、結果的には広報にも役立ちました。

 人命救助のためにいち早くルートを確保しなければならない道路の「啓開」は、時間をかけてきちんと直す「復旧」とは概念が違います。できるだけ迅速に、東京方面から内陸を通ってきた救援部隊を太平洋側に送り出さなければならない。とにかく「くしの歯状」に並ぶ16本のルートを啓開することに集中してほしいという意図を、作業を担う現場に分かりやすく伝えようとしたのです。

「くしの歯作戦」のイメージ。太平洋側の道路が津波で寸断されたため、内陸からの救援ルートを急いで確保した (資料:国土交通省東北地方整備局)
「くしの歯作戦」のイメージ。太平洋側の道路が津波で寸断されたため、内陸からの救援ルートを急いで確保した (資料:国土交通省東北地方整備局)

通常の災害対応と東日本大震災の相違点。国土交通省東北地方整備局の資料をもとに日経コンストラクションが作成した
通常の災害対応と東日本大震災の相違点。国土交通省東北地方整備局の資料をもとに日経コンストラクションが作成した

徳山局長が3月12日に国土交通大臣への報告用にまとめたメモには、既に「くしの歯状」というキーワードが表れている (写真:日経コンストラクション)
徳山局長が3月12日に国土交通大臣への報告用にまとめたメモには、既に「くしの歯状」というキーワードが表れている (写真:日経コンストラクション)