「再び逆風の世界に戻りかねない」
――建設業界の情報発信に対する姿勢には、どんな問題があるとお考えですか。
はっきり言えば、高度経済成長期のころの意識から抜け出せていない。トンネルができれば日の丸を振って歓迎してくれた時代はとうに終わりました。インフラは「健康」と同じで、失わないとありがたみが分からない存在になっています。震災では、インフラの重要さがクローズアップされた。我々はそれをきちんと伝える必要があったのに、国交省も含めて昔の体制のまま、その日を迎えてしまった。
もちろん、東北地方整備局の職員も、建設業界も、文字通り「命懸け」の活躍をした。一般の人に伝わっている面もあるとは思います。驚いたのは、土木分野を目指す受験生が増えていることです。ある首都圏の大学のデータを見せてもらったのですが、受験生の総数は減っているのに、土木学科の志願者は3割ほど増えていた。いろんな大学の先生から、そういう話を聞いています。明らかに、イメージは改善したのです。
しかし、建設業界はそれで終わりにしている。復旧や復興に向けた予算が付き、我が世の春がやって来たかのようにふるまっていると、社会は「建設業界は結局、金もうけのためにやったのか」というムードになってしまう。イメージの改善には、継続的に取り組まなければならない。このタイミングでやらなければ、再び逆風の世界が待っています。