自衛隊幹部は「年季が違う」と語った

――なぜ、そのような差が生まれたのでしょうか。

 自衛隊の幹部と話をしていて「すごいですね」と水を向けたら、「我々は50年も『無駄』だと言われ続けてきた。建設業界はまだ10年だから、年季が違う」と笑われた。自衛隊は長らく「税金泥棒」などと批判されてきました。災害支援活動でも、「警察や消防『など』」と報道されてきた歴史があります。だから彼らは発信力を磨いた。

 それだけではありません。現場力にも磨きをかけた。1995年の阪神大震災では知事の要請が遅れ、出動が遅いと批判されました。だから、東日本大震災では要請が来る前に偵察を開始しています。優れた現場力と発信力があってこそ、今の自衛隊の姿があるのだと思います。

 我々や建設業界にも現場力は十分にあった。今後は発信力を磨かねばなりません。「世間は分かってくれない」といじけるのではなく、自衛隊と何が違うか、自分たちに何ができるのかを直視しなければならない。広告を少し出したり、ちょっと記事になったりするぐらいでは達成できない。この自衛隊幹部の言葉を、かみ締めなければ。

東北地方整備局に設けられた災害対策室。2011年3月11日の夜には、騒然とした雰囲気のなかで情報収集が進められた (写真:国土交通省東北地方整備局)
東北地方整備局に設けられた災害対策室。2011年3月11日の夜には、騒然とした雰囲気のなかで情報収集が進められた (写真:国土交通省東北地方整備局)