政権交代で、予定していた事業が突然、凍結。かと思えば、すぐに再開したりする。土木が政治に振り回されていると感じる技術者や行政関係者は多いに違いない。振り回された揚げ句、実質的に何も変わらなかった事業もある。その一例が、東京外かく環状道路(外環道)だ。

 都心から約15kmの位置を環状に走る外環道は、既に常磐、東北、関越の各自動車道を結ぶ区間が開通している。関越道─東名高速道路間については70年の事業凍結以降、長らく動きがなかったが、09年5月の整備計画決定によって、ようやく事業化された。

 しかし、事業化した矢先の09年9月に政権交代。新政権は、旧政権時代の事業見直しを宣言した。外環道については、09年度補正予算で計上された71億円のうち、測量・設計費の5億円を除いた用地費・補償費66億円の執行を停止した。

合併施行方式を問題視

 外環道は、建設費用の1~3割程度を高速道路会社が負担し、残りを税金で賄う「合併施行方式」で建設する予定だった。この方式を、民主党政権は問題視した。国と高速道路会社の両者で施行すると、責任分担が曖昧になるというのだ。

 ただし、整備を進めること自体に大きな異論はなかったので、政府は10年度予算で4月に58億円、さらに12月に30億円を外環道の用地費などに配分した。しかし、どのような施行方式にするのか決まっていない以上、本格的な着工には進めない。

 「暫定的な予算しか付かなかった」(東京都建設局)と、早期建設を求める自治体からは不満が上がった。沿線住民からも、事業の先行きが不透明で生活の見通しが立たない、といった声が東京都などに寄せられた。

割引財源の流用図るも失敗

 その後、外環道に関する方針は迷走する。国交省は10年3月、高速道路会社が有料道路事業として整備する方式を打ち出した。料金収入だけでは建設費を賄えないので、自民党政権時代に確保していた料金割引の原資の一部を、外環道などの建設に流用する仕組みだ。

 料金割引が少なくなれば、実質的な値上げになる。当時、民主党の幹事長だった小沢一郎衆院議員が「無料化どころか値上げになる」などと批判。それに対して、前原誠司国交相(当時)が、「建設促進を要望しておきながら値段が上がってはいかん、というのは二律背反だ」と反発するなど、政権内での足並みもそろっていなかった。

 結局、割引の原資を外環道建設に使う案は実現せず、ほかの方式を探ることになった。