政府は東日本大震災から4カ月後の7月21日に、復興基本方針の骨子をまとめた。復興特区制度の創設のほか、土地利用再編計画手続き上の特例措置などを講じる。

 震災によって、技術基準なども変わりつつある。津波対策基準では、数十年から百数十年に一度の頻度で発生する津波は海岸保全施設で防ぎ、それをはるかに上回る規模の津波は避難などのソフト対策を組み合わせて減災する。国土交通省は防波堤や防潮堤を、東日本大震災のような最大級の津波に対しても倒壊しない「粘り強い構造」とする考えだ。

 さらに国交省は道路事業の事業評価項目に「防災機能」を加えた評価手法の暫定案をまとめた。三陸沿岸道路など「復興道路」と位置付ける道路の事業評価で試行。従来の3便益(走行時間短縮、走行経費減少、交通事故減少)による費用便益比が1未満でも事業採択を認めた箇所もある。

東京湾岸で多くの液状化現象

 東日本大震災では、マグニチュード9.0という地震の規模の割に、揺れによる構造物被害は少なかった。0.5秒以下の短周期が卓越した地震動だったことに加えて、今までの耐震補強の効果があったとみる専門家は多い。

 ただし、今後の耐震化を考えるうえで懸念材料もある。阪神大震災以降、採用が増えている積層ゴム支承が破断する現象が、仙台東部道路の東部高架橋で発生した。福島県では藤沼貯水池のアースフィルダム堤体が決壊。締め固め不足や遮水性が弱かった可能性が専門家から指摘されている。

 震源から遠く離れた東京湾岸では液状化現象が顕著に見られた。複数の震源域が連動し、地震の継続時間が長くなったことが一因だ。千葉県浦安市では埋め立て時期によって被害の有無に差が生じた。

 放射能汚染にも悩まされるようになった。また、原発の稼働休止で関東・東北地方では、夏の使用最大電力を前年比で15%削減しなければならない事態に陥った。工事現場では節電の取り組みが加速した。