厚生労働省は5月20日、2010年の死亡災害と重大災害の結果を発表した。労働災害による建設業の死亡者数は前年比1.6%減の365人で、集計した8業種の中で最も多かった。一方、東日本大震災の復旧作業に関連して4月30日までに120人が死傷。このうち、69人が建設業だった。

●労働災害による死亡者数の推移
(資料:下の2点も厚労省)
(資料:下の2点も厚労省)

 建設業の死亡者数が前年より減少するのは2006年から4年連続。「土木工事業」で前年に比べて10人減ったうえ、「設備工事等のその他建設業」で前年より4人減った。「建築工事業」が8人増えたので、全体では6人の減少にとどまった。

 3人以上の労働者が同時に被災する重大事故は、建設業が前年比16.0%増の87件と全8業種の中で最も多かった。全産業での発生件数は前年に比べて7.5%増えているが、建設業の増加率はこれを8.5ポイント上回った。

 2010年の死亡災害を事故の型別に見ると、増加が最も顕著だったのは「熱中症」。前年の約6倍に当たる47人が死亡した。建設業も熱中症による死亡者数の増加は著しく、前年の5人から3倍以上の17人に増えた。

●事故の型別で見た業種ごとの死亡者数

 建設業の死亡災害で最も多かったのは「墜落・転落」で、死亡者数は前年より12人増の159人。中でも吊り足場からの墜落や転落が、前年比9人増の14人と顕著だった。これら14人のうち、8人は橋の改修工事などで吊り足場を組み立てたり解体したりする際に転落して死亡している。

 一方、東日本大震災の復旧作業に関連して死傷した人の数は、4月30日までに120人。業種別に見ると、建設業が69人と最も多く、全体の57.5%を占めた。

●東日本大震災の復旧・復興に関連した労災事故

 復旧作業に関連した死亡者の数は全体で7人を数えており、このうちの4人が建設業。例えば、福島県の災害廃棄物の集積場でブルドーザーを運転中、盛り土を乗り越えようとしたところオペレーターが運転席から転落。下敷きになって死亡している。瓦屋根の補修工事などで軒先から墜落して死亡する事故も、2件発生した。

 厚生労働省は、早期に復旧・復興するためには工事が安全に実施されることが必要だと考え、岩手県と宮城県、福島県に安全衛生の拠点を6月初旬にも開設する予定。工事の進ちょくに応じた安全対策の指導やパトロールを実施するほか、拠点で相談などを受け付ける。

 併せて、建設会社などには「震災復旧・復興工事安全推進本部」の設置を要請。建設業労働災害防止協会を中心に総合建設会社や専門工事会社を交えて推進本部を組織し、会社の枠を越えて復旧工事などでの安全対策を検討する。厚生労働省によれば、同推進本部も6月の早い時期に設置されるはずだという。