日経コンストラクションは、2010年12月24日号から2011年1月24日号まで3号連続で、写真家の篠山紀信氏が建設現場を撮影するシリーズ「現場紀信」を掲載した。取り上げたのは、橋脚が神殿の柱のように立ち並ぶ「圏央道高架橋」(埼玉県久喜市)、世界一高い自立式電波塔「東京スカイツリー」(東京都墨田区)、繁華街直下の大空間で工事が進む「東急渋谷駅地下化工事」(東京都渋谷区)。篠山紀信氏に、ファインダー越しに感じた現場の魅力を語ってもらった。


日経コンストラクション2010年12月24日号を手にする篠山紀信氏。篠山氏が撮影した圏央道高架橋の写真を8ページにわたって掲載(写真:日経コンストラクション)
日経コンストラクション2010年12月24日号を手にする篠山紀信氏。篠山氏が撮影した圏央道高架橋の写真を8ページにわたって掲載(写真:日経コンストラクション)


 ものが出来上がっていく途中の姿が面白い。例えば、圏央道の高架橋。完成すれば見慣れた高速道路の橋になってしまう。造っている途中だからこそ、見方によってイメージが膨らむ。神殿の柱のように見えたり、遺跡のように見えたり。

 東京スカイツリーは、伸び盛りというか、これから行くよというパワーがあって、それが街を活性化させている。普通の街のなかに、異物が突き破って出てきた。その違和感が面白い。この1本が突き出ることで、そこに住む人間をざわめかせている。

 ほかの人はスカイツリーそのものを神格化して撮ろうとする。でも、僕は街や人とともにある姿に興味を引かれる。撮影のときにたまたま結婚式に出くわしたが、この街では年中いろんなことが起こっているということだ。それをすかさず撮った。

 渋谷駅地下工事では、人に寄って撮影した。働いている人が休憩しているとき、カメラを向けている僕にふと気付いてこっちを見ている。大空間では人が小さくなり、アリのように働いているふうに見えがちだけど、人間くささがある写真になった。地下の大空間にも関わらず、人間がコツコツ造っている感じが出たと思う。(篠山紀信氏談)


「現場紀信」でこれまでに取り上げた現場は以下のとおり(カッコ内は日経コンストラクションの掲載号)。
●GENBA1 羽田空港D滑走路(2010年1月8日号)
●GENBA2 東京港臨海大橋(2010年1月8日号)
●GENBA3 東京ガス扇島LNG地下タンク(2010年7月23日号)
●GENBA4 圏央道高架橋(2010年12月24日号)
●GENBA5 東京スカイツリー(2011年1月10日号)
●GENBA6 東急渋谷駅地下化(2011年1月24日号)