受注競争の激化や現場を取り巻く環境の変化を受け、現場代理人の役割が大きく変わりつつある。その能力や資質が、建設会社の受注や生き残りをも左右するようになってきた。一方、現場代理人の育成に悩む企業は少なくない。この連載では、これからの現場代理人に欠かせない能力や資質を明らかにしたうえで、それらを身に付ける方法をお伝えする。筆者は、多くの現場代理人を育成・指導してきたハタコンサルタント(株)代表取締役の降籏達生氏。業績向上の成功例も交えながら、解説してもらう。(編集部)


 建設会社が工事を受注すると、現場代理人を選任する。現場代理人とはその名の通り、社長の代理である。発注者からすれば、すべての工事において経営者に責任を持って対応してもらいたいものだ。しかし、経営者の体は一つしかなく、すべての工事を担当することは物理的に不可能である。そこで経営者が現場代理人を選任し、工事を経営者の代理として責任を持って完成させるのだ。

 現場代理人の主な仕事は、施工管理である。多くの協力会社の作業員や職人を統率し、ムダなく作業ができるように指揮・監督する。あたかも、オーケストラを操る指揮者のようなものだ。もしくは、プロ野球の監督とも言える。

 プロ野球の監督は、その多くが元名プレーヤーであり、自身のプレーヤー経験を基に選手を指導する。しかし、現場代理人の多くは、型枠を組むことはできないし、鉄筋も組めない。左官工事も防水工事もすることはできない。にもかかわらず、それらの作業に携わる人たちに指示、命令し、指揮・監督をしなければならない。

 それゆえ、現場代理人として成果を上げるためには、現場代理人に特有の資質や能力が必要だ。それがなければ、多くの作業員や職人を指揮・監督することができず、言うことを聞いてもらえないので、結果として良いものができない。

 連載の第1回では、成果を上げる現場代理人にはどんな資質が必要なのかについて考えてみよう。