前原誠司国交相は9月17日の就任会見で、ダム事業中止に対する考え方を示すとともに、河川行政の転換を訴えた(写真:ケンプラッツ)
前原誠司国交相は9月17日の就任会見で、ダム事業中止に対する考え方を示すとともに、河川行政の転換を訴えた(写真:ケンプラッツ)

 前原誠司国土交通相は、民主党の衆院選マニフェスト(政権公約)通りに、群馬県の八ツ場(やんば)ダム、熊本県の川辺川ダムの建設中止を明言。9月23日には八ツ場ダム、26日には川辺川ダムの現地を視察した。「八ツ場ダム、川辺川ダム中止は、公共事業見直しの入り口」と位置付ける前原国交相。果たしてダム問題に、民主党政権はどう決着を付けるのか。

 9月17日の就任会見では、八ツ場ダム、川辺川ダムに関する質疑が相次いだ。前原国交相はダム事業見直しの考え方を語り、「できるだけダムに頼らない河川整備を進める」とのスタンスを強調した。以下はダム問題に関するやり取り。(ケンプラッツ編集部)


――八ツ場ダム中止の考えを表明したが、地元の理解を得るためには困難な場面が生じると思う。どういった手順を踏んで実現していくのか。

前原国交相 昭和27年に計画が始まって以来、50年以上の長きにわたって、この問題において、当該住民の方々、関係者の方々には、われわれの想像を絶するご労苦をおかけしてきたんだと思います。八ツ場に限らず、ダムの建設予定地はほぼ例外なく、当初は誰もが反対をするという中で説得が行われ、その地域から離れている人もおり、うまくお付き合いしていた隣人関係が悪くなったり、様々な苦労を超えて、建設容認に傾いていったという歴史的な経緯があると思っています。そういう意味では、私どもが本体工事の中止を申し上げていることについては、ぜひ皆さん方にご理解いただいて、その方向で取りまとめをさせていただきたい。

 まず大事なこと、考えなければいけないことは、その方々がいかにご苦労されてきたかという思いを持って、お話をうかがい、ご要望をうかがい、それに沿った形で解決策、われわれの方向性を模索していくことが大事だと思います。ご苦労をかけた、今までの計画を変更するということは、当該住民、自治体に対する、何らかの補償措置というものを、法的な枠組み、財政的な裏づけを持って進めなくてはいけないと思っております。民主党が野党の時に補償措置の法律案をつくっております。

 八ツ場については、できれば連休中に、向こうが受け入れ態勢を整えていただけるということであれば、わたし自らがお伺いして、こちらの意見を申し上げるというよりは、ご苦労された経緯を真摯にうかがう場をぜひつくっていただければありがたいと思います。自治体の首長さんや知事との懇談も持てればありがたいなと思っています。いずれにしましても、考え方については、本体工事の中止ということは持っておりますけれども、皆さん方の思いをしっかりとうかがいながら、丁寧な対応をし、その事後策を考えていきたいと考えております。

――流域の都県からは、中止されるんであれば、これまで支出した事業費の返還を求めるという首長もいます。どう対応するのか。

前原 いままで推進するといっていた事業を止めた時に、どういった補償措置をとるかといった法整備の中に、検討する項目の一つとして考えさせていただきたいと思います。どのような中身にするかは、今後詳しく検討していきたいと思っていますが、丁寧な対応が必要だと思っています。