2009年9月18日、国土交通副大臣に馬淵澄夫氏(民主党)と辻元清美氏(社民党)が就任した。担務(担当する任務)は馬淵氏が「災害対策関係施策、国土関係施策および社会資本整備関係施策の総括」、辻元氏が「安全・危機管理関係施策、交通関係施策および北海道開発関係施策の総括」だ。前原誠司大臣、両副大臣、そして民主党の国会議員から選ばれた3人の政務官を中心に、「政治主導」の国土交通政策を展開していくことになる。

 馬淵氏は横浜国立大学工学部土木工学科出身で、三井建設に勤務経験もある元土木技術者だ。民主党で高速道路問題のスポークスマン的な役割を果たしてきた。民主党のマニフェストでは、高速道路は「原則」無料化であり、首都高速・阪神高速など渋滞が想定される路線・区間などについては「社会実験を実施して影響を確認しつつ、実施する」(「民主党高速道路政策大綱」)という方針だ。馬淵氏の関連発言を振り返ってみると、原則はこれら方針に沿ったものとなっている。

 馬淵氏については、民主党がマニフェストに掲げる建築基準法の改正にどうかかわっていくのかも気になるところだ。05年、耐震偽装問題を国会で追求した中心人物が馬淵氏だ。耐震偽装が告発されるべき問題だったことは間違いないが、その後の建基法改正による規制強化により建設業界は不況に陥った。

08年に開催されたシンポジウム「改正建築基準法はいりません!!」に登壇した馬淵氏(写真:日経アーキテクチュア)

 当時野党だった民主党の馬淵氏が制度設計に主導的にかかわるのは難しかったが、改正建基法には批判的だった。08年4月に都内で行われたシンポジウム「改正建築基準法はいりません!!」に登壇した馬淵氏は、「建築基準法を抜本的に見直し、再度改正しなければならないと思う」「目の前の対応は確かに必要だ。実際に地方の中小、零細企業の方々は大変な状況だ。(中略)確認検査が滞っているのならばとりあえず、いまある制度の中で、いくつかの運用を変えて何とかしのげる方法を考えなければいけない」と発言している(ケンプラッツの当該記事)。

 今回、自らが制度改正に直接かかわることができる立場となった馬淵氏が、現在の改正建基法をどう修正していくのか。その動向が注目される。

 辻元氏は外交問題などの論客として知られるが、公共事業問題にも詳しく、自身の公式サイトには「公共事業の効果・影響などあらゆる段階で市民がチェックできるようにし、事業の中止・計画の変更など市民の意志を直接反映できる制度をつくる」といった政策を記している。

 「ひとと環境にやさしいまちづくりをめざして、公共交通の充実などにとりくみます。また私は、学生時代から旅行企画を手がけてきました。観光にも力を入れて、地域地域のよさを伝えていきたいと思います」――就任に際しての抱負を辻元氏はブログでこう述べた。「観光」は前原国交相が強調する今後の成長分野の一つでもある。

 なお、9月18日には国土交通省政務官人事も決定した。長安豊氏(衆議院議員)、三日月大造氏(衆議院議員)、藤本祐司氏(参議院議員)だ。いずれも国土交通政策に詳しい民主党の議員である。担務は、長安氏が「災害対策関係施策、社会資本整備関係施策、航空関係施策、公共事業の適正な執行の確保に関する事務」、三日月氏が「安全・危機管理関係施策、交通関係施策(航空関係および観光関係の施策は除く)、鉄道関係事務」、藤本氏が「国土関係施策、北海道開発関係施策、観光関係施策、新国土計画の推進および土地対策の総合的な推進に関する事務」。

国土交通副大臣のプロフィール

馬淵澄夫(まぶち・すみお)
衆議院議員、国土交通副大臣、民主党政策調査会副会長。1960年奈良県生まれ。横浜国立大学工学部土木工学科卒業後、三井建設社員、コンピューター関連商品製造販売会社取締役などを経て、2003年11月衆議院議員初当選。現在3期目。05年には耐震強化偽装問題を国会で追及。道路行政問題にも精通している。
【公式サイト】http://www.mabuti.net/

辻元清美(つじもと・きよみ)
衆議院議員、国土交通副大臣、社民党国対委員長/女性青年委員長。1960年奈良県生まれ。早稲田大学在学中の1983年に『ピースボート』を設立し、民間外交を展開。96~2002年まで衆議院議員。議員在職中にNPO法、情報公開法などに取り組み成立させる。05年、09年と衆議院選挙当選。
【公式サイト】http://www.kiyomi.gr.jp/


 馬淵氏の公式サイト
辻元氏の公式サイト
馬淵氏と辻元氏の公式サイト。両氏ともブログで積極的に情報を発信している。