日経コンストラクションでは毎年、土木でのICT(情報通信技術)活用に関する特集記事を掲載しています。ICTに関して土木が建築と大きく違うのは、土木の場合は「国の施策ありき」という側面が強い点です。

 近年、ICT特集で主に取り上げている情報化施工やCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)は、国土交通省が旗を振って普及を促進しているテーマです。情報化施工用の機器を自ら進んで導入し、便利さや効率の良さを実感している会社もありますが、今はまだ「やらざるを得ないから」始めたところの方が多い気がします。

 一方で、電子機器類には「どのぐらい役立つかは分からないけど、何かおもしろそう」という魅力があるのも事実でしょう。実際、土木のICT活用でも、“ワクワク感”のあるものが出てきています。日経コンストラクション6月22日号の特集「建設ICT2015 じわりと広がる進化形への挑戦」では、そうしたアイテムの活用についても取り上げました。


日経コンストラクション2015年6月22日号特集「建設ICT2015 じわりと広がる進化形への挑戦」から
日経コンストラクション2015年6月22日号特集「建設ICT2015 じわりと広がる進化形への挑戦」から

 その最たるものが、ドローン(UAV、無人航空機)ではないでしょうか。先日の首相官邸への落下事件などもクローズアップされていますが、「正しく」使えば様々な効果が得られる機器です。さほどの費用と手間をかけずに、自分が携わる現場の様子をつぶさに、そしてリアルタイムに、見たり測ったりすることができるわけですから。

 特集記事では、岐阜県高山市内の道路建設現場でのドローン活用事例を取り上げています。複数の地元建設会社が、発注者や社内への進捗報告、施工手順の検討、住民説明などに利用して効果を上げています。元々はある1社が導入したのがきっかけですが、その様子を見聞きした他社がこぞって導入を決め、瞬く間に広まったといいます。

 効果の有無はもちろんですが、「おもしろそうだからちょっと使ってみたい」と思う人が多かったことが、一気に広まった要因なのではないかと考えます。単に「役に立つ」ものよりも、「役に立つかどうか分からないけどワクワクする」ものの方が、早く普及するのは間違いありません。使ってみておもしろければ、誰に言われなくてもいろいろ工夫しますから、おのずとさらなる効率化につながっていくでしょう。