最新の建設業就業者数と建設業許可業者数、あなたはご存じでしょうか? 正解は、就業者数が約505万人(2014年の平均)で、許可業者数が約47.3万社(14年度末時点)。技術士第二次試験の筆記試験でよく出題される事柄なので、受験される方はぜひ押さえておいてください。

 さて、ここからが本題です。これらの推移についてみてみると、就業者数はピーク時(1997年)の685万人から26%の減少、許可業者数はピーク時(99年度末)の60万社から22%の減少です。バブル経済崩壊後の建設投資の縮小で大きく減少しましたが、建設投資がほぼ半減したのに比べれば、いずれも減り方は緩やかです。つまり、建設業の需給バランスは、供給過剰の状態が続いていることになります。

 建設投資が「底」だった2010年前後、供給過剰の状態が各社の疲弊を招き、その是正の必要性が叫ばれていました。ところがその後の公共事業急増で人手不足の問題ばかりがクローズアップされ、需給バランスの話題は立ち消えになった感があります。

 しかし、建設投資はいずれ、再び落ち込むでしょう。景気が良い今だからこそ、先送りされてきた供給過剰の是正に手を付けるべきではないか。日経コンストラクションでは6月8日号で、特集「建設業50万社の行方」を企画しました。


日経コンストラクション2015年6月8日号特集「建設業50万社の行方」から。熊本県の資料をもとに日経コンストラクションが作成
日経コンストラクション2015年6月8日号特集「建設業50万社の行方」から。熊本県の資料をもとに日経コンストラクションが作成

 公共事業の受注が主体の建設会社の場合、合併して企業規模を大きくしてもメリットは少ないと言われています。入札機会が減るだけでなく、格付けが上がれば規模の大きい会社との競争が待っています。そんなわけで、建設会社の合併は、行政側の“誘導”なしには進みません。

 その誘導が比較的スムーズに行われたのが、特集記事で取り上げた熊本県です。11~14年度の4年間で、県内の建設会社の合併は64件に上りました。きっかけは、11年6月の制度改正です。等級ごとの会社数や、各等級の発注金額を定める発注標準を見直すことで、上位の等級の会社を優遇する制度に変更しました。技術と経営に優れた会社が生き残れるように、下位等級の会社の反発を覚悟で、行政が業界再編を促したのです。

 熊本県では、構想を掲げてから半年という短期間で、制度の変更にこぎ着けました。行政がかん口令を敷き、見直しの内容を事前に公に漏らさなかったことも、変更を可能にした要因の一つと言われています。県が、業界再編に本気で取り組んだことがうかがえます。

 入札制度の見直しは、いわゆる「ゼロサムゲーム」で、見直しによって得をする人がいれば、損をする人が必ずいます。多方面に配慮していてはことが進みません。業界体質を変えたいと思うなら、熊本県のように行政が本気になって、一気呵成に取り組まなければなりません。ただし、一部の反発を押し切って進める以上、結果責任を負う覚悟も同時に求められます。