塩害環境下の予防保全には必須

 非破壊検査の適用を考える例として、沿岸地域にある塩害環境下のコンクリート構造物で、点検によってひび割れを見つけた場合を考えてみる。この構造物の健全度を評価するには、以下の項目を判定・評価することが必要だ。

 (1)劣化の原因は塩害か、(2)内部鋼材は発錆しているか、(3)内部鋼材は破断していないか、(4)内部鋼材は発錆する環境下か、(5)供用しても安全か、(6)劣化はどのように進行するのか。

 各項目に客観的な判定や評価を下すためには、コンクリート中の塩化物イオン濃度分布や中性化深さ、鉄筋やPC鋼材の位置とかぶり、発錆状況、破断状況、保有している耐荷性能(負担可能な荷重)を知ることが必要だ。そのために適切な非破壊検査を選ぶ。

 特に、塩害環境下のコンクリート構造物に対して非破壊検査で内部の劣化状況を的確に把握することは、予防保全を実施するうえでは欠かせない。

 塩害損傷の進行は速い。表面にひび割れなどの劣化現象が現れた時点では、既に内部の劣化がかなり進行していることが多い。

 とはいえ、塩化物イオン濃度や中性化深さの把握は、非破壊検査だけでは対応できない。構造物の耐久性能の低下を最小限に抑えるためには、コンクリートドリルの削孔粉を用いる方法や小径コア(径25mm)を採取する方法などの微破壊検査を併用する。