鳴り続ける警鐘

 国として、モデル事業を設定したことからも分かるように、亜炭鉱跡がもたらす陥没問題は、御嵩町の近隣自治体なども含めた広域にわたるリスクだ。

 津波被害などによって影が薄くなっているものの、東日本大震災では11年7月までに、石炭・亜炭採掘跡が原因とみられる陥没が、東北などを中心に326カ所も確認されていた。

 にもかかわらず、経産省が設けたモデル事業の活用に踏み出せたのは、御嵩町だけだ。ほかの自治体では、陥没リスクをまとめたハザードマップを整備していないなど、事業の採択要件である対策の必要性についての合理的根拠を提示できなかった。

 陥没リスクの調査には人手も手間も掛かる。ボーリングといった精査には相応の費用も要る。加えて、その結果を明示すれば、地価下落という点で地域住民などへの影響も避けられない。これらの点から、多くの自治体はリスク調査やその公表に尻込みしているのが実情だ。

 しかし、時代は変わりつつある。災害リスクの調査や開示は、社会的要請となり始めている。14年に広島で発生した大規模な土砂災害を機に改正された土砂災害防止法において、行政が把握するリスクの住民への開示が重視された点は記憶に新しい。

 15年3月には、愛知県春日井市内の公園で、直径約5m、深さ約1mに至る陥没が発生。市は、亜炭鉱跡が原因だと結論付けた。

 ほかにも、炭鉱跡などが原因とみられる陥没は、枚挙にいとまがない。警鐘は鳴り続けている。リスク調査やその開示を早急に始めなければいけない。