対策事業まで10年以上を費やす

 町内で広がりを見せている陥没対策の取り組みが、ここに至るまでの道のりは長かった。町が亜炭鉱の廃坑リスクを警戒して動き出したのは、10年以上前に遡る。

 02年度から過去の亜炭鉱関係者へのヒアリングや資料の掘り起こしを行い、陥没リスクを示したハザードマップを作成。08年に町内各戸に配布した。

 マップは作成したものの、具体的な防災対策は簡単には実現できない。「十分な補助制度がないなか、陥没を防ぐための充填工事費を、町の予算で工面することは難しかった」と鍵谷室長は振り返る。

 町内では過去に国交省が進めた東海環状自動車道の建設に伴って、その道路下での充填対策を実施した例はあったものの、それ以外の民間の宅地や既存道路での対策は進まなかった。

 潮目が変わったのが南海トラフ巨大地震に対する認識の高まりだ。経済産業省が13年度の補正予算で、南海トラフ巨大地震亜炭鉱跡防災モデル事業を設定。住宅など既存構造物に対する予防事業が可能になった。