2種類の充填材を使い分け

 こうした工事で使う充填材は、入り組んだ地下の空洞をしっかりと埋めるための流動性が求められる。

 一方、限られた予算で広域に及ぶ地下空洞に効率的な対策を講じるには、施工箇所を危険性の高いエリアや重要構造物の下部に限定しなければならない。そのため、充填範囲を明確に区分けする必要がある。

 かといって、区分けのために土留め壁を構築することは困難だ。深い位置に打設する鋼矢板はコストが割高となり、施工に騒音や振動を伴うので、住宅地の近接箇所での採用は容易でない。

 他方、コラムジェットをはじめとする造成型の土留め壁は、広い空洞があれば施工できない。

 そこで新たな知恵として生まれてきたのが、比較的コストを抑えて施工できる充填工法の応用技術だ。流動性が高く、亜炭鉱跡の隅々にまで注入できる充填材と、その充填材が施工対象範囲外に流れ込まないような壁を構築する充填材とを組み合わせる。

エリアを限定して充填する工法の概要図(資料:飛島建設)
エリアを限定して充填する工法の概要図(資料:飛島建設)

 町内を通る東海環状自動車の建設を機に、飛島建設と国土交通省、先端建設技術センターなどが共同で開発した。飛島建設が技術をテコに、同町の工事で連続受注に成功している原点はここにある。