高速道路会社各社が、相次いで大規模更新・修繕事業に取り組み始めました。そこでにわかに脚光を浴びている部材があります。それは、橋の構成部材の中でも地味に見える存在、「床版」です。

 特に大規模更新では、疲労や塩害などで劣化している床版を一気に新しいものに交換します。更新と修繕を合わせると、床版の市場規模は高速道路会社の分だけで2兆円を超え、国土交通省や自治体が管理する橋も含めれば、その倍以上あるとみられます。目の前の数兆円市場に向け、建設に関連する会社がこぞって床版に注目しているのです。

 首都高速道路会社の更新事業は既に始まっており、続いて阪神高速や東・中・西の各高速道路会社の更新事業も3月25日に認可されました。日経コンストラクションではこのタイミングに合わせ、4月13日号で特集「床版大更新時代」を企画しました。


日経コンストラクション2015年4月13日号特集「床版大更新時代」から
日経コンストラクション2015年4月13日号特集「床版大更新時代」から

 重交通路線ほど床版の傷みは早く、修繕や更新の優先順位が高いわけですが、交通量が多いゆえ、長期間の通行規制は困難。夜間に作業する場合、舗装を剥がして床版を修繕または交換し、夜明け前には仮舗装して交通開放――。このサイクルを繰り返さざるを得ません。例えば、東京都内の国道357号・荒川河口橋では、床版の疲労亀裂対策にSFRC(鋼繊維補強コンクリート)舗装を実施していますが、2年間でわずか300mの範囲しか施工できなかったといいます。

 こうした困難を乗り越え、大きな市場を手にしようと、床版に関する技術開発が盛んに行われています。特集記事には、鋼床版、PC(プレストレスト・コンクリート)床版、RC(鉄筋コンクリート)床版について、技術開発の最新動向を盛り込みました。大手建設会社や橋梁メーカーに限らず、中小建設会社や建設コンサルタント会社、材料メーカーなど、床版は桁などに比べると関係する業種が多いのも特徴です。「床版? 関係ない」と思っている人もぜひ、特集記事をお読みください。関係ないようで、実は巨大市場の入り口に立っているかもしれません。

 また、今号から隔号で、新連載「カウントダウン2020」を開始しました。東京五輪に向けて変貌していく首都圏の街やインフラの姿をグラビアでお届けします。「カウントダウン」の名のとおり、いくつかのインフラや構造物を“定点観測”し、完成に近付いていく様子を追っていきます。1回目は、東京五輪の際に選手村と競技場をつなぐ大動脈となる東京都市計画道路環状2号線を取り上げました。今後も注目のプロジェクトが続々登場します。ご期待ください。