今年6月に、「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(品確法)が改正されました。法律の目的はその名のとおり工事の品質確保ですが、対象案件の品質確保にとどまらず、将来の品質確保にまで目を向けたのが特徴です。そのために不可欠な取り組みとして、担い手の育成・確保を前面に打ち出しています。

 改正品確法に「担い手確保」がうたわれ、発注者の責務として「適正な利潤が確保できるように予定価格を適切に決める」、「ダンピング防止のために最低制限価格などを設定する」といった内容が盛り込まれたことを歓迎する方は多いでしょう。私も、正しい方向の改正であると考えています。

 ただ、この改正は「担い手確保のために建設会社を保護する」とも読める内容ですから、さじ加減を間違えれば、社会から様々な批判を受けることは容易に想像できます。実際、「行き過ぎでは?」と思える事例も見受けられます。

 日経コンストラクション12月22日号では、特集「都合のいい『品質確保』」を企画し、品確法改正による“副作用”について考えてみました。


日経コンストラクション2014年12月22日号特集「都合のいい『品質確保』」から
日経コンストラクション2014年12月22日号特集「都合のいい『品質確保』」から

 それを考える一端となるのが、茨城県神栖市での公共工事への入札参加資格を巡る一連の動き。東日本大震災で被災した同市が、災害復旧工事に限った特例措置として、市と災害協定を結んだ企業だけに入札参加資格を与えたというのが概要です(詳細はこちらのページに)。それに対して、東京都内に本社があり、市と災害協定を結んでいなかった建設会社が、受注機会を失ったとして市に損害賠償を請求。水戸地方裁判所は、「参加資格要件には合理性がない」と認定し、市に2750万円の支払を命じました。市は判決を不服として控訴中ですが、競争性と企業保護について考えさせられる事例と言えます。

 神栖市の担当者は入札参加資格の限定について、担い手を確保するために地元企業を育成するのが一番の目的であると説明しています。訴訟の対象となった入札の実施は2013年4月だったので、この事案自体は品確法改正の影響を受けたものではありませんが、今後もこうした事態はあちこちで出てくることが考えられます。

 インフラの維持管理や除雪など、地元の建設会社がつぶれてしまっては対処できない案件はたくさんあります。ただし、過度な地元企業育成で競争性をそいでしまえば、将来、減っていく仕事を少しずつ分け合うしかありません。技術力があり、経営努力をしている企業でも、共倒れに巻き込まれてしまう危険をはらんでいます。