若手技術者の獲得に苦労している建設産業。業界のイメージが良くないのに加え、大型プロジェクトの減少で仕事に夢を描けなくなってきたことが、その原因だと言われています。

 確かに、社会資本が足りていなかった高度経済成長期、新たなインフラを整備すれば人々は利便性の向上を実感できました。土木技術者としても、大きなものを造り上げ、しかも市民から感謝されることで、達成感や充実感が得られていたに違いありません。

 しかし、社会情勢は大きく変わり、「最近の若手技術者は気の毒だ」という年配技術者の声も聞こえてきます。では、そうした時代に建設業界に飛び込んできた若手は、本当に気の毒なのでしょうか。日経コンストラクション12月8日号の特集では、そんな若手技術者の気持ちを探るべく、彼らの奮闘ぶりに焦点を当てました。


日経コンストラクション2014年12月8日号特集「未来を切り開く若手技術者」から
日経コンストラクション2014年12月8日号特集「未来を切り開く若手技術者」から

 「自然災害」「老朽化」「人材難」「海外展開」という四つのキーワードを挙げ、それぞれのテーマに向けて力を発揮している若手技術者を合計10人、取り上げています。これらのキーワードはいずれも、昨今の建設産業が直面している大きな課題。「老朽化」を例に取れば、インフラの新設以上に、地域や現場ごとに異なるきめ細かな対応が求められます。手間がかかるうえ、対応すべきインフラの数も急増しています。全国にインフラを行き渡らせることが使命だった時代に比べると、一つひとつの課題は複雑化していると言えるでしょう。

 しかし、困難な課題だからこそ、感じられるやりがいがあります。例えば、中央自動車道・笹子トンネルの天井板撤去工事の現場で中心的な役割を担った大林組の下村哲雄氏(35歳)は、「細かい書類作成に追われるのではなく、限られた時間のなかで課題の解決策を考えながら実現していくところ」と、仕事の面白さを表現しています。目の前に立ちふさがる課題が、若手のモチベーションになっているのです。

 「若手は気の毒だ」と考えている年配の技術者は、昨今の自分たちの仕事に魅力を感じなくなってしまったのかもしれません。若手技術者の入職を促すためには「建設産業の魅力を発信することが重要だ」と指摘されますが、まずは自分たち自身が、建設産業の魅力とは何なのか、再認識する必要がありそうです。