「隧道(ずいどう)沸騰」。日経コンストラクション11月10日号の特集のタイトルです。黒部川第三発電所を舞台とした小説「高熱隧道」を連想された方がいらっしゃるかもしれませんが、本誌の特集記事では、ここ最近のトンネル市場の過熱ぶりをこのように表現しました。


日経コンストラクション2014年11月10日号特集「隧道沸騰」から
日経コンストラクション2014年11月10日号特集「隧道沸騰」から

 市場を盛り上げている主役の一つは、10月17日に国土交通大臣が工事実施計画を認可したリニア中央新幹線です。品川―名古屋間(285.6km)の9割に当たる256.6kmをトンネルが占めることになります。都市部での大深度・長距離のシールドトンネルあり、最大土かぶり1400mで延長25kmに及ぶ山岳トンネルありと、まさに空前絶後のプロジェクトです。現時点において、トンネルの建設費だけで1兆6220億円が見込まれています。

 そしてもう一つ。東京五輪に向けて、首都圏のトンネル建設も熱を帯びてきました。首都圏3環状道路の一角を占める東京外かく環状道路(外環道)の都内区間では、延長16kmにわたって、外径16mの大口径のシールドトンネルを2本、掘削します。この本線トンネルの掘削だけで、契約金額は合計約5700億円。さらに、インターチェンジやジャンクションの箇所では、大規模な分岐・合流部を非開削で構築するというかなり難易度の高い工事が今後、発注されます。

 特集記事では、市場が盛り上がる様をお伝えするとともに、プロジェクトを成功に導くうえでの課題も指摘しています。まず、技術的な難易度の克服。さらなる技術の進歩も望まれますが、これについては十分に乗り越えられると考えます。

 懸念されるのは、人材や資機材の不足でしょう。直近の20年間で、トンネル工事の工区数は4分の1に減少。建設会社やシールド機などのメーカーでは、人員や設備が縮小され続けてきました。そんな状態で、急激な市場の過熱に対応できるのか――。例えば、震災復興でトンネル建設が目白押しの東北地方では、セントル(トンネルの型枠)やコンクリート吹き付け用のバッチャープラントについて、既に納期や価格が厳しくなり始めているといいます。

 東京五輪が行われる「2020年」が、様々なプロジェクトの区切りになっている感がありますが、例えばリニアの建設はその後も続きます。本誌では長期的な視野で、こうした課題についても注視していきたいと思います。