他の非破壊検査技術に対する優位性は?

 欠陥の有無を判定する方法は複数ある。コンクリートの振動波形を解析して得たスペクトル(加速度の時刻歴データに含まれる各周波数成分の強さを表したもの)を使うのが、代表的な手法だ。

 下図のようなスペクトルのグラフをもとに、グラフ全体の面積に対するしきい値以下の面積(低周波数域)の割合を算出。0.09より大きければ欠陥があると判定する。この判定値は「スペクトルスコア」と呼ぶ。しきい値や判定値は、実際の変状と整合するように、実験などに基づいて設定している。

 レーザー法のほかにも、コンクリートを点検するための非破壊検査技術はいくつもある。電磁波や赤外線、超音波を利用する方法が有名だ。しかし、いずれの技術についても新幹線のトンネルで用いるには一長一短があった。

 電磁波や超音波を用いる方法は、いずれも点検対象に接近しなければならない。健全部と欠陥部で「冷え方」が異なることを利用する赤外線検出法なら離れて点検できるが、コンクリートをヒーターでいったん温めなければならず、計測にはコストと時間が掛かる。遠方から高速点検できるレーザー法なら、こうした問題を一挙に解決できるのだ。

スペクトルスコアを用いた健全性の判定方法。JR西日本の資料をもとに日経コンストラクションが作成
スペクトルスコアを用いた健全性の判定方法。JR西日本の資料をもとに日経コンストラクションが作成

既存の主な検査方法とレーザー法の比較(資料:JR西日本)
既存の主な検査方法とレーザー法の比較(資料:JR西日本)