打音検査の「ハンマー」を「レーザー」に置き換えた

 レーザーの向きは、鏡を使って簡単に変更できる。検査装置を自走式の専用車両に搭載すれば、トンネルの壁面全体をくまなく調査できるのだ。たとえ高さが約10mもある天端部でも、足場や高所作業車を用いずに、地上から高速点検が可能だ。

 コンクリートの健全性は、計測した振動波形を解析すれば瞬時に判定できる。コンクリート内部の浮きや剥離の有無によって、振動の特徴が異なるからだ。「欠陥部は健全部に比べて低い周波数成分が多い、といった特徴を利用する」(レーザー技術総合研究所レーザー計測研究チームの島田義則主任研究員)。

 一般に、トンネルなどのコンクリート構造物の点検には、打音検査と呼ぶ手法を用いる。作業員が点検箇所をハンマーで打撃し、高くて澄んだ音を「健全」、低くて鈍い音を「欠陥」などと判定する方法だ。実はレーザー法も、人手による打音検査と原理は同じ。ハンマーをレーザーに置き換え、人間の感覚の数値表現に成功した点が画期的だ。

独自のレーザー干渉計によって、コンクリート表面で反射した信号光と参照光の光路差から振動情報を検出する。信号光はコンクリートの表面形状に関する不要な情報を含むので、ダイナミックホログラム結晶を用いて除去する仕組みを考案した。資料はJR西日本の資料をもとに日経コンストラクションが作成
独自のレーザー干渉計によって、コンクリート表面で反射した信号光と参照光の光路差から振動情報を検出する。信号光はコンクリートの表面形状に関する不要な情報を含むので、ダイナミックホログラム結晶を用いて除去する仕組みを考案した。資料はJR西日本の資料をもとに日経コンストラクションが作成

コンクリートの健全性を評価した結果の一例。コンター図を写真に重ね合わせた。赤色は不健全、緑色は健全な箇所を示す。新幹線の橋梁での試験データだ(資料:JR西日本)
コンクリートの健全性を評価した結果の一例。コンター図を写真に重ね合わせた。赤色は不健全、緑色は健全な箇所を示す。新幹線の橋梁での試験データだ(資料:JR西日本)