7割超の水が消えるお粗末さ

 実際の仕事になれば、久保田氏の本領を発揮できる。久保田氏に続いて技術指導に訪れた職員たちも高い評価を獲得し続けた結果、市に対する強い信頼が固まっていった。

 技術支援を始める前のプノンペン水道公社の事業内容は、お粗末だった。漏水や盗水によって失われる水の量の割合を示す無収水率は7割を超え、10%を切る日本の水準には遠く及ばない。料金納付率も5割を下回る惨憺(さんたん)たるものだった。

支援当初は、盗水が珍しくなかった。写真は消火栓からローリー車で水を盗む様子(写真:北九州市)
支援当初は、盗水が珍しくなかった。写真は消火栓からローリー車で水を盗む様子(写真:北九州市)

水道管から違法に分岐している様子(写真:北九州市)
水道管から違法に分岐している様子(写真:北九州市)

 市の支援では、事業の着実な改善を図った。まずは、市が取り入れていた供給エリアのブロック割りによる配水管理を試みた。プノンペンの配水管網を41ブロックに分け、各ブロックに流れる水量を遠隔監視したのだ。特別な技術ではないが、盗水や漏水の状況を把握できるようになった。