2008年12月にピークを迎え、その後は減少傾向が続いている日本の総人口。今年5月、将来の人口動態について、「日本創生会議」(座長:増田寛也・元総務相)が衝撃的な試算を発表しました。2040年までに若年女性(20~39歳)が5割以上減少する市町村が全体の約半数に上り、これらの市町村は将来、消滅する可能性が高いと指摘したのです。地方部の自治体だけでなく、その中に東京都豊島区が含まれていたことも話題となりました。

 人口がこれから加速度的に減少していくなか、地方を中心にコミュニティーの維持は難しくなっていくでしょう。その結果、利用者が不在となり、管理の手も回らず、放置されるインフラがあちこちに出てくるのではないか――。放置されたインフラは事故や災害を招く恐れがあります。

 日経コンストラクション10月27日号では、このような問題について考えるために、特集「誰も管理しないインフラ」を企画しました。


日経コンストラクション2014年10月27日号特集「誰も管理しないインフラ」から
日経コンストラクション2014年10月27日号特集「誰も管理しないインフラ」から

 実は、「誰も管理しないインフラ」は、既に各地で見られ始めています。その最たるものが、高速道路などに架かる跨道橋です。例えば香川県では、小さなコンクリート片の落下事故をきっかけに、誰も管理していなかった跨道橋の存在が発覚。その後の調査で、管理されていない跨道橋が計11カ所に上ることが分かりました。

 こうした事例の多くは、建設者と管理者が異なっているのに、移管がうまくいっていなかったことが要因です。管理者が、インフラの現状(存在自体も含めてですが)をしっかりと把握できていない状況が現れているわけです。

 人口減少は、インフラ利用者の減少に結び付くだけでなく、自治体にとっては税収の減少ももたらすことになります。利用者が減ってインフラを維持管理することが得策ではないと判断しても、解体・撤去の費用の捻出が、自治体には大きな負担としてのしかかります。

 今年4月の地方財政法の改正で、解体・撤去を対象とした地方債の発行が可能になり、財源面での手当てがなされました。ただし、その条件として、インフラ長寿命化基本計画の行動計画に当たる「公共施設等総合管理計画」の作成が求められます。インフラ維持管理の将来を考えるうえで、自治体は自らが管理するインフラの現状把握をきちんとすることから、まずは始める必要があります。