年間180万円が重荷に

 さらに、車を運転する人にとっても、横断歩道橋は安全を妨げている事例があることが判明した。交差点などに歩道橋があると、橋脚や階段の存在が死角となって、通行者などがよく見えなくなるケースがあったからだ。

交差点部に歩道橋の支柱があると死角が生じて安全に支障を来すケースがある(写真:札幌市)
交差点部に歩道橋の支柱があると死角が生じて安全に支障を来すケースがある(写真:札幌市)

 歩道橋の存廃を考えなければならない理由は、利用者の変化だけではない。施設の老朽化も大きく影響している。

 既に述べたとおり、市内の歩道橋では、完成から40年を超える施設が大半を占める。こうした施設では今後、更新をはじめ、老朽化に伴う大掛かりな対応が必要になってくる。利用ニーズが低い場所で横断歩道橋を更新したり大規模修繕したりしても、無駄な投資になりかねない。

 自治体の財政難が続く状況下では、日常の維持管理費の負担も無視できない。市内の歩道橋では、冬でも利用できるようロードヒーティング設備を配している。当然、冬の利用では電気代を要する。

 加えて、利用を続けるのであれば、設備自体を15年程度の周期で更新していかなければならない。また、横断歩道橋は20年に1回の頻度で塗装の塗り替えを要する。こうした施設の維持管理に対して、市は横断歩道橋1橋当たり、1年間に約180万円を投じている状況にある。

 一方、撤去工事であれば1橋当たり約1000万円を要する。5年程度の維持管理費があれば、撤去は可能なのだ。これでは、利用者が少なく、便益の小さい施設は撤去した方が、メリットが大きくなる。

 こうした状況を踏まえ、市は前述したような撤去に向けた手続きやその条件などを検討してきた。