東日本大震災からの復興、東京五輪に向けたインフラ整備など、局地的に、そして短期間のうちにやり遂げなければならない公共事業が目白押しです。しかし、これらの事業だけにリソースを集中することはできません。全国で、「次なる震災」への備えが必要だからです。

 首都直下地震と南海トラフ巨大地震。国土交通省は二つの巨大地震に備えた計画を2014年4月に取りまとめ、今後は各地で対策が加速していきます。日経コンストラクションではこれを機に、5月26日号で特集「創造的震災対策」を企画しました。


日経コンストラクション2014年5月26日号特集「創造的震災対策」から
日経コンストラクション2014年5月26日号特集「創造的震災対策」から

 「創造的」という言葉には、地震に備えるという本来の目的に加え、新たな価値を創造するという意味を込めています。ヒト・モノ・カネが限られるなか、少しでも整備期間を短縮したり、震災対策以外の価値を生もうとしたりしている事例を紹介しました。

 その一例が、浜松市内で施工中の防潮堤。同市で創業した住宅メーカー、一条工務店グループが巨額の寄付を申し出たことで話題になりました。現地発生材を利用するCSG(Cemented Sand and Gravel)として、現場の砂を利用した初めての防潮堤で、耐津波性能を確保できるのはもちろん、海岸沿いに残る保安林との共存が可能です。特殊な工事ではないので、地域の企業が施工を手掛けられることも地元にとってはメリットと言えるでしょう。

 そのほかの注目事例として、東京・隅田川に架かる永代橋と清洲橋の耐震補強も挙げられます。いずれも関東大震災後の「震災復興橋梁」で、架設から90年近くが経過していますが、東京都によれば、若干の部材の追加だけで首都直下地震に備えられるといいます。

 震災復興橋梁だったためか、地震時の現象に対して余裕を持たせた設計思想を取り入れていて、例えば地震時に想定する水平力を大きめにみていました。一方で、巨大地震で軽微な損傷が生じても通行に支障がない程度であれば良いという発想で、経済性も意識していたと考えられています。

 短期間で数多くの震災対策事業を実施するには、新しい技術を取り入れることも必要です。加えて、先人の知恵に学ぶことも、課題の解決に役立つのではないでしょうか。