鶴田ダム再開発事業、堤体に日本一深くて長い管を増設（土木のチカラ2014）

ダムに思いやりを持って施工

　穴開け工事はダムに負荷がかからないよう、思いやりを持って丁寧に進めている。例えば、壁面の凹凸は応力集中の原因になるので、自由断面掘削機で削孔した後、小型の切削機で仕上げる。さらに、放流管には縦断勾配があり、堤体の水平打ち継ぎ目を通過する。ここでは削孔時にコンクリートの剥離が生じないように、より慎重な作業を要する。（談）

「飽和潜水」を中心に工程を検討

　仮締め切りの施工経験は多い。だが、この工事は水深が深く、施工量も多い。水深30m以上の潜水作業では、潜水士が約1カ月間、作業水深と同じ気圧で生活しながら作業する「飽和潜水」を用いた。費用は高いものの、１日最大6時間の作業時間を確保でき、作業効率が高い。潜水士の手待ちを無くすことを最優先にした作業計画を練った。（談）

［現場概要］
■事業名＝鶴田ダム再開発事業 ■施工場所＝鹿児島県さつま町神子 ■発注者＝国土交通省九州地方整備局川内川河川事務所 ■事業費＝711億円 ■事業期間＝2007年度～17年度

（堤体掘削と減勢工構築）

■工事名＝鶴田ダム施設改造工事 ■設計者＝日本工営（増設放流管・減勢工、管理技術者：植本実）、開発設計コンサルタント（発電管、管理技術者：木村忠則） ■施工者＝鹿島・西松建設JV（現場代理人：滝口紀夫、元請けの技術者数：25人） ■主な専門工事会社＝協拓建設（堤体掘削）、アジア海洋、寄神建設（以上、台座コンクリート）、丸磯建設、協拓建設（以上、減勢工躯体） ■工期＝2011年2月～15年3月 ■工費＝122億8500万円 ■入札方式＝総合評価落札方式による一般競争入札 ■予定価格＝124億9500万円

（仮締め切り）

■工事名＝鶴田ダム上流仮締め切り設備工事 ■設計者＝八千代エンジニアリング（増設放流管仮締め切り設備、管理技術者：勝山敏）、開発設計コンサルタント（発電管仮締め切り設備、管理技術者：木村忠則） ■施工者＝日立造船（現場代理人：宮本修、元請けの技術者数：5人） ■主な専門工事会社＝アジア海洋（扉体設置）、大阪装置建設（扉体組み立て） ■工期＝2011年1月～15年3月 ■工費＝58億4850万円 ■入札方式＝総合評価落札方式による一般競争入札 ■予定価格＝64億8777万円