水位変化で削孔箇所に応力集中
ダム改造によって、ダム湖の水位変化は従来よりも15m程度大きくなる。堤体は水位が高いと下流側に傾き、堤体下流面には圧縮力が生じる。一方、水位が低いと上流側に傾き、引張力が生じる。そのため、国交省では「増設する管の周辺に生じる引張応力が堤体に悪影響を与えないか、FEM(有限要素法)解析を用いて検討した」(同事務所開発工務課の亀園隆課長)。
流量を確保しつつ、放流管の本数を抑えるようにした結果、放流管は内径4.8mのものを3本設けることになった。1カ所の削孔断面が小さい方が、堤体への影響も小さい。
同事務所では工事に先立ち、堤体下流面に直径2.5m、長さ5mの穴を試験的に開けた。そして、堤体の挙動やクラックの有無などを調査し、設計に問題がないと確かめた。
ダム施設改造工事の施工を担う鹿島・西松建設JVの滝口紀夫所長は、削孔作業について、「天端付近の水平方向の削孔精度は、堤体の構造への影響が大きく、特に重視している」と話す。
現在、鹿島JVは3カ所で削孔作業を進めている。非出水期となる13年10月中旬以降、堤体の上流面に設置した仮締め切り内部から水を抜いて貫通させる予定だ。残り2カ所は14年度に施工する。