2013年も残すところわずかとなりました。昨年12月に笹子トンネルの天井板崩落事故が発生し、その後、衆院選で自民党が大勝。この二つの出来事が、今年の建設業界に大きな影響を与えました。安倍政権はインフラ老朽化対策を含む「国土強靱化」を推し進め、9月には2020年の東京五輪開催も決定しました。公共事業が再び活気を帯びた1年だったと言えるでしょう。

 一方、2013年は、台風や豪雨による災害が多い年でもありました。台風の発生数は19年ぶりに30個を超えました。台風以外によるものも含めると、7月には中国地方で、8月には東北地方で、9月には近畿地方で、それぞれ大きな被害を出しました。さらに、10月中旬に来襲した台風26号では、東京都の伊豆大島で39人の死者・行方不明者を出す土石流災害が発生しました。

 日経コンストラクション12月23日号では、こうした1年を振り返る意味を込めて、特集「“記録的豪雨”の恐怖」を企画しました。伊豆大島の土石流発生のメカニズムなどを詳しくお伝えしています。


日経コンストラクション2013年12月23日号特集「“記録的豪雨”の恐怖」から
日経コンストラクション2013年12月23日号特集「“記録的豪雨”の恐怖」から

 豪雨といえば土砂災害がすぐに思い浮かびますが、それだけではありません。今年の豪雨は、土砂災害以外のリスクも浮き彫りにしました。特集記事では、京都市内で発生した地下鉄の冠水、名古屋市で生じた地下街への浸水被害について取り上げています。これらは運良く、人的被害にはつながりませんでした。しかし、豪雨の発生確率は年々高まっており、将来に向けて見過ごせないリスクと言えます。

 特集の後半では、こうした豪雨への対策として、各地で取り組みが始まった事例を示しています。新しくダムを造ったり河川改修をしたりという大がかりな「ハード」の整備とは違う着眼点でまとめました。例えば滋賀県では、洪水への危険度に応じて建築規制を設けることを検討しています。当初は今年10月の条例制定を目指していましたが、住民や議会からの反発を受けて継続審議になっています。

 災害への備えとして、ハードだけでは限界があることはもはや明らかですが、ソフト対策の実現には時として困難がつきまといます。滋賀県の例のように、人の住まい方に関わる場合はなおさらです。居住制限や集団移転となれば政治的判断が大きくなるのは確かですが、土木技術者は行政や住民に対して、技術的な観点から冷静に説明できる能力が求められることになるでしょう。