■インスペクションエンジニアの調査項目
部材区分 調査項目
上部構造 主桁 ひび割れ
剥離・鉄筋露出
遊離石灰
漏水・滞水
異常振動
異常たわみ
欠損
鋼材に沿った異常
鋼材定着部の異常
床版 剥離・鉄筋露出
遊離石灰
抜け落ち
鋼板接着部の損傷
床版ひび割れ
鋼材に沿った異常
鋼材定着部の異常
横桁 ひび割れ
剥離・鉄筋露出
遊離石灰
漏水・滞水
欠損
鋼材に沿った異常
鋼材定着部の異常
下部構造 躯体 ひび割れ(PC構造)
ひび割れ(RC構造)
剥離・鉄筋露出
遊離石灰
すり減り・浸食
漏水・滞水
欠損
三井住友建設が自社で手掛けた橋梁の自主パトロール用にまとめている目視調査の項目で、同社の資料をもとに日経コンストラクションが作成

 定年対象者の再雇用という枠を越えて、シニア技術者の知見を積極的に生かす動きもある。三井住友建設は5年前から、退職したOBによる「橋梁インスペクションエンジニア」制度を導入している。

 同社では以前から自社で手掛けた橋梁について、支店工事部や近隣で進行中の工事現場のベテランが、劣化などの状態を確認する取り組みを続けてきた。自主的なパトロールとして、目視のみで可能な範囲を一定の項目に沿って現況を記録。状況次第で、管理者に報告する場合もある。

 対象は現在、約4400橋。年間で延べ300~400橋のペースで確認作業を実施しており、複数回の点検を実施した橋もある。結果はデータベース化している。補修などの受注を期待した活動ではなく、同社独自の品質管理策の一種。データの蓄積によって、劣化に関するノウハウの蓄積など、技術力向上につながる点も期待した活動だ。

 同社はこの現況確認作業の一部をOBに委託。その知見を活用するとともに、繁忙な支店や現場の負担軽減も狙う。現在5人のOBが活動に携わっている。同社が支給するのは基本的に日当と経費だけで、事実上、ボランティアに近い活動だ。

三井住友建設OBで橋梁インスペクションエンジニアの桑原氏(写真:日経コンストラクション)
三井住友建設OBで橋梁インスペクションエンジニアの桑原氏(写真:日経コンストラクション)

 2006年に60歳で定年退職した桑原晴雄氏もその一人で、08年から参加。現役時代は本社で橋梁の設計や施工、東北支店の技術部門で施工計画立案などを長く手掛けた。

 「この約5年間で関東地方を中心に、東北の一部も含めて約350橋を回った。現在67歳だが、“応援団”のつもりであと3年は続けたい」。桑原氏はこう言って笑う。