法制化の後押しもあって産業界にますます浸透する「定年延長」の波。慢性的な人材不足も背景にして、土木業界でも「60歳はまだまだ現役」とシニア技術者が長年の経験や知識を生かせる場が広がっている。

 「定年延長」の動きが産業界全体で加速するなか、土木業界でも様々な側面で、シニア技術者に活躍の場が広がっている。一度は現役を退いたシニアの経験や知識を、人材育成や技術伝承に生かそうとする取り組みも本格化し始めている。

 大林組では、定年の60歳を迎えた技術職を年間契約で再雇用。65歳まで契約更新が可能だ。再雇用者の働き方は、主に次の3タイプ。

  • 現場所長など現職を継続
  • 若手所長のサポート役として副所長など次席級で現場配属
  • トンネルなど特定の工種で高い専門性を持つ人は支店付きで当該工種を伴う管轄内の現場に助言

 こうした形を本格的に整えたのは約2年前からで、年間の定年対象者の約9割を再雇用している。9月中旬時点で再雇用中のシニアは約160人。土木技術職全体の約9%に当たる。

 「シニアの高い経験値は、組織にとって極めて重要。40歳前後の中堅層を現場所長に登用する取り組みに力を入れているが、そうした世代の人材育成にも有効だ。最近では、一度は再雇用したが家族の介護など本人の事情で契約更新を止めたシニアに、再び声を掛けることも実施し始めた」。土木本部本部長室の辻忠彦部長はこう説明する。