人脈づくりや両立支援を組織で
女性技術者の活躍の場は着実に広がっているが、一般に男性と比べて、出産や育児といったライフイベントが働き方に影響を及ぼしがちな状況は依然、変わらない。大手建設会社などでは、こうした課題に対して従来より一歩踏み込もうとする取り組みが始まっている。
大成建設では、土木系女性技術職の育成に関する取り組みを強化し始めた。昨秋には、対象者を本社に集めて意見交換会を開催。本格採用し始めた03年以降の入社組が対象で、その9割を超える約50人が集まった。狙いは、会社が求めるキャリア像を明確に伝える一方、日頃の悩みや本音を吸い上げること。下に掲げたのは、参加者の声の一部だ。
- 会社が女性社員をどう位置付けているのか、明確にしてほしい
- 「女性が働きやすい職場」とは、会社は具体的にどう考えているのか?
- 夜間工事中心の現場に配属されていて、「女性に夜勤はどうか?」という話も耳にする。本人が無理だと感じていなければ問題ないと思っているが、その点を会社はどう考えているか?
- 体力的な男女差に対する配慮がないと、精神的にもきつい
- 産休と育休を経て復職したが、休職前には可能だった配属先の仕事について、復職後は自分の状況が変わったので不安を感じている
- 残業が多い。今後、子供が生まれたら今の仕事の仕方のままでは厳しい。時短勤務を利用した場合、自分の仕事のさばき方、また周囲の負担を増やしてしまうことへの不安を感じる
- 現場の実態を考えると結婚や出産、子育てとの両立は、家族の支えとともに、会社の協力なくしては不可能
- 結婚や出産を経験して勤続している先輩(女性技術職)が感じていることを知りたい。一日の過ごし方、大変なこと、要望など
- 産休や育休の取得は、人事上(昇進面などに)影響があるのか?
- 5年後、10年後の自分が描けない。結婚や出産後のことはまだ分からない
- 女性、女性と言わなくてもよい。女性の社会進出は普通のことで、建設業だけ「女性だから」と言っているのは少し違うと思う
- 女性を対象にした機会を設けてもらうのはありがたいが、部署や環境によっては逆差別と受け取られる可能性もあると思う
開催実務を手掛けた土木本部企画室の内山恵理氏も技術職。施工管理を経て、出産後に内勤職に転じた。現場の仕事と育児との両立に悩む時期もあったという。「参加者の声には、私自身が同様に感じていた指摘も多い。身近に共感し合える同性の相談相手がいない人もいる。意見交換会後の懇親会などを含めて、社内の人脈づくりにもつながる」(内山氏)。今年度も継続開催の予定だ。
同じく昨年から始めた女性社員向けの「夫婦(パートナー)で考える両立支援セミナー」は、少しユニーク。仕事と家庭の両立がテーマで、社内外を問わず配偶者やパートナーとの共同参加が基本だ。土木技術職からの参加も多く、今年も9月に開催。「女性の継続就業では、配偶者の協力が不可欠」(人事部人材いきいき推進室の塩入徹弥室長)。今年はセミナー映像のネット配信も行い、自宅でも視聴できるようにした。