ビッグデータという言葉が世間をにぎわしています。大容量のデジタルデータのことを指す用語で、自分たちにはどこか縁遠いという印象を持つ土木技術者の方も多いと思います。

 しかし、最近は状況が変わりつつあるようです。実際、ビッグデータを扱ったり、データを取得するセンサーを開発したりするICT(情報通信技術)関連の企業は、土木に熱い視線を注ぎ始めています。彼らは果たして何を狙っているのでしょうか。

 その答えを探るべく、日経コンストラクション8月26日号では、特集「維持・補修2013 到来!スマートメンテナンス」を企画しました。「スマートメンテナンス(賢い維持管理)」というのは造語ですが、特集のサブタイトル「ICTや大量のデータが維持管理を変える」から、記事のイメージをつかんでいただけると思います。


日経コンストラクション2013年8月26日号特集「維持・補修2013 到来!スマートメンテナンス」から
日経コンストラクション2013年8月26日号特集「維持・補修2013 到来!スマートメンテナンス」から

 政府が閣議決定した「日本再興戦略」や、総務省が発表した「ICT成長戦略」では、センサーを利用してインフラのデータを取得することや、それらのデータを活用して効率的な維持管理を進めることなどがうたわれています。センサーから得られる「ビッグデータ」をインフラの維持管理に生かしていくことが、国の政策として位置付けられているわけです。

 既に、動き出している事例もあります。例えば、東京港に架かる東京ゲートブリッジでは、光ファイバー方式の変位計など48個のセンサーを取り付け、1秒当たり約2800のデータを取得して橋の健全度を監視しています。このように、新設のインフラを中心に、センサーを取り付けて自動的にデータを集め、人の目や手に頼った維持管理から一歩進もうとする例が増えてきました。ICT関連企業は、ここに新たなビジネスのにおいを感じているのです。

 とはいえ、「データを維持管理にどう生かすか」という点では、まだ考えなければならないことが山積しています。どんな種類のデータを取るのか、そこから何を読み取るのか、補修や補強のタイミングをどう見極めるのか――。ICT企業だけでは答えを出せません。インフラのことをよく知っている土木技術者との協働が必須です。ICT企業と同様、土木に関わる企業にとっても、スマートメンテナンスは新たなビジネスチャンスになる可能性を秘めています。